Memorise ― 僕らがいた証 ―
□Memorise 番外編 第四章『Miss You…』
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『Miss You……』
Side 涼矢
お前がいなくなって何週間たったかな。ココ。
「男子バレー部に、今一度大きな拍手!」
俺たちは体育館のステージの上にいる。夏休み明けの始業式でわざわざ表彰式なんかやってくれた。
「キャプテンの宮村君に挨拶してもらいます」
「はい」
俺はマイクの前に立って、一礼した。
「俺たち、男子バレー部は、みなさんのおかげで、全国一位のチームになることが、出来ました。
チーム一丸となって戦うことができて……」
こんなありきたりな挨拶しかできない自分が、もどかしいよ。
こんな気持ち、今俺を見てるやつらは知らないんだろうな。わかるはずないだろうな。
ココ、お前という存在を憶えているやつがいないんだよ。お前がいたという記憶、消えてるんだ。俺は、それがたまらなく悔しいよ。
「お疲れ、キャプテン」
式が終わって、アリーナの外で待っててくれたレンが俺にそう言った。こいつも、考えていることは同じらしい。
「……本当はさ、八人で拍手もらうはずだったんだよな」
「あぁ」
「あいつも、俺たちのチームメイトだもんな」
「もちろん」
悔しいな、そう言って、レンは俯いた。俺も黙った。何も言えなくなった。
悔しいよ。ココ。なんでだよ。
あの時、俺たちが一番苦しかった時、スズと一緒に大きい声で応援してくれたお前が、いなかったことになるなんて、俺は嫌だよ。
本当は、言いたかったよ。さっき。あの場で。
『俺たちを支えてくれた、マネージャー二人の応援のおかげで、俺たちは頑張れたんです』って。
「男子バレー部集合!」
俺は号令をかけた。今日で俺たちはこのバレー部を引退する。受験勉強、しなきゃいけないからな。
俺の声で集まってきたレギュラーを含めた部員たち。
レン、フミ、ヒロ、ユウ、セイ、そしてスズは、どこか落ち込んだ顔をしている。あの日からずっとだよ。
でも、不思議なことがあった。他の部員が、きょろきょろと、周りを見ていた。まるで、誰かを探すように。
「どうした?」
訊ねてみれば、その中の一人が答えた。
「誰かが、足りない気がして……」
全員いるよな?と首をかしげる部員たち。不思議そうな顔をしている。
「……そうか」
俺は微笑んだ。何だ。消えてなんか、いねえじゃん。なんて、心の中で呟いて。
そりゃ当然だよな。ココ、お前はレギュラー以外の部員の世話も一生懸命していた、本当にいいマネージャーだったよ。
みんなが覚えていて、当然だ。
「リョウ?」
「リョウ君?」
「部長……?」
みんなが俺を見ている。何だ?どういうことだ?
「……大丈夫?」
スズに言われて、俺は気づいた。頬に伝う、雫。
「……情けねぇ」
泣いてんじゃねえよ。俺。かっこ悪ィ。最後くらい、部員の前でびしっとしてないと。
「これで、次からはお前らの番だ!俺たちが築き上げた最上中バレー部の名を汚すんじゃねえぞ!」
「「はい!」」
きっぱりとした返事だった。爽やかだった。俺が大好きな、仲間たちの声だった。
―― なぁ、ココ。聞こえてるか?俺たち、憶えてるからな。お前の事、絶対に忘れないからな!
お前は、いつまでも俺たちの『大切な仲間』だから……
Side 涼矢 Fin