めいん(NL side)
□COTTON CANDY <未来>
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「お腹あんまりすいてなかった?」
乗り込んだタクシーの中で未来くんが吐息のかかるような位置で私の顔を覗き込んでくる。
「ううん、どうして?」
「だってさっきご飯あんまり食べてなかったから」
付き合って2ヶ月の記念に、って未来くんがお寿司屋さんに連れてってくれた。
もちろん回っているお寿司じゃなくて、壁にネタの名前札だけしか架けられていないカウンターだけの店。
値段なんて知ったらきっと庶民の私なんか食欲が失せると思う
実際緊張すぎて味わからなかったけど…
「仕事で疲れちゃった?」
夜もすっかり深けて、私達の乗っているタクシーを交差する車のヘッドライトが未来くんの横顔を照らす。
「そんな事ないよ」
そう言って笑ってみるものの顔が強張っているのがわかる。
「明日仕事休みだったよね。今日はずーっと一緒にいられるよね?」
シートに着いていた手の上に未来くんの大きな手が重なった。
「うん」
付き合って2ヶ月といってもふたりっきりで過ごせたのはほんの数回。
お互い仕事があったし、カジノのメンバーからお誘いがあればそちらを優先にふたりで顔を出していたから。
今日はふたりでいられるチャンスなんだから頑張らないと。
そんな私の気持ちとは裏腹に未来くんの表情がさえない。
あ、ひょっとして何か誤解してるかも…
「真希ちゃんもしかして無理してる?」
真っすぐ射抜くような視線が私の動きを止める。
「え…?」
「だって今日は変だよ真希ちゃん。上の空だし、僕と視線合わせないようにしてるし」