めいん(NL side)
□君と夢と桜と 後編<未来>
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「しばらく店に行かなくていいようにしてるの。それに」
彼は私に跨がったまま上半身を起こした。
「ボクが『痛み』という思い出をオネーサンに刻んでいるの」
「思い出…」
彼を見上げれば頭越しにカーテンレールに掛かっている桜色のパーカーが、殺風景な部屋に映えていた。
「言ったでしょ。ボクが嫌な思い出押し出すって。オネーサンの中ボクでいっぱいにしなよ」
「…君の事好きにならないよ…」
再三の忠告。
「…わかったよ。でも思い出は受け取ってね」
困った顔をして屈むと私の髪に指を差し込んで撫でる。
「それと『君』じゃなくて、僕の名前は未来。影山未来だよ。オネーサンの名前は?」
「…真希」
ほろり、と本名が出た。
「真希ちゃんいい名前だね。オネーサンに合ってる」
未来くんはそう言うと私の服に手をかける。
「…電気点いてる…」
「だって暗くしちゃったら真希ちゃん他の事考えちゃうでしょ?」
服も下着も脱がされて、未来くんもカラダに何も纏ってない状態になって
どこを見ていいのかわからなくなって思わず目をそむける。
「目をそらしちゃダメ。ちゃんとボクを見て。感じて。真希ちゃんの脳とカラダに記憶して」
未来くんの口に私の胸の先が含まれる。
そこから伝わるのはまた痛み。
私は熱い吐息を口から吐き出す。
「…未来くん痛いよ」
「やっと名前呼んでくれた」
顔を上げてあの笑顔をくれる。最初に会った日も、次の日の笑顔もいつも本心からの笑顔だったんだね。
「だからね、もう痛くするのは終わり」
その彼の言葉と、カラダを私は受け入れた。