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□逢いたかったんだもん。寂しかったんだ。
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「・・・はぁ。」
空を見上げながら溜息を零す、一人。
さながら恋する乙女である。
だが、その溜息の主が問題なのだ。
正にそんなことイメージに合致しないと多くの人がそう、思うだろう。
・・・人物的に。
「逢いたい・・・。」
「逢いたいよ、兄上。」
「アーーーーーッシュっ!!!!!」
「!!??」
只今、走ってはいけないと
口を酸っぱくして言われている筈の所、即ち廊下を、
爆走して来るそれ。
「あ、」
それに、普段の鉄仮面が人目も憚らず綻んだ。
だって、それは、
「っ・・・!!兄上っ・・・!!!」
彼が散々逢いたいと言っていた
彼の兄だからである。
「あああアッシュ俺の可愛い可愛い愛しいアッシュ!髭に何かされてないか!!??怪我してないか!?病気してないか!?風邪引いてたりしてないだろうな!?お兄ちゃん居なくて寂しかったか!?俺はもう寂しくて寂しくて死にそうだった!!マジ大マジで!!あああアッシュアッシュ大好きだマジ愛して「兄上っ!!」ん?なぁに俺の可愛い可愛いアッシュ?」
「っ・・・可愛いって言うのは止めて下さいっ恥ずかしいです・・・!!!」
「かぅわいいっ!!!!!」
ガバッ
「ひゃうあっ!!!」
抱き締められた事でアッシュの顔はみるみる内に赤みが増していく。
すると、彼の兄は黙って動かない。
「・・・?兄上・・・?」
「・・・・・・」
「・・・レン兄様・・・?」
「・・・・・・」
これも外れだったようだ。
あぁ、アレなのか、
アッシュは悟ると、周りを一瞥してから軽く息を吸って、小さく
「レ、レンお兄ちゃん・・・!」
と耳元で呟いてやった。
すると今までアッシュの肩に顔を沈めていた兄がキラキラした瞳で
「っ・・・!!アッシュ!!!」
と言うと更に強く抱き締めてきた。
そうするとなんだか嬉しくて嬉しくて、
「お帰りなさいっ、兄上っ・・・!!」
泣くつもりなど無かったのに、
兄の背中に手を回して泣いてしまった。








・・・リグレットが廊下を走り抜けて行ったレンに追い着いて来るまで後30秒。

・・・追い着いてきたリグレットにレンがこのブラコンが!!と正座でお説教を受けるまで後35秒。

・・・アッシュがそのお説教を聞いて自分自身もかなりのブラコンであると気付くまで後1分。
























→大反省会と言う名の言い訳祭り。
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