オリジナル長編

□ひだまり
2ページ/39ページ

課長がそう言って、そばに立っていた二人を前に出した。二人とも男性で、共にやや背が高く、片方は格好いいというよりは可愛い顔立ちで、もう一人は少し釣り目の日本的顔立ちだった。
「はじめまして、北条潤一郎といいます。今まで九州支店にいまして、本日より本社勤務となりました。よろしく御願いします」
童顔少年がにこやかに言った。
「えー、本日より本社に配属となりました二階堂由紀夫です。北条君とは同期でしたが、私は金沢支店にいました。慣れないうちは皆さんにご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、よろしく御願いします」
釣り目青年が淡々と言った。
課長は満足そうに二人を見て言った。
「現在、うちの課は、男子が安達くんと三浦君、女子が稲村君、大船君、腰越君という少数精鋭でやってきましたが、二人が加わったこのメンバーでこれからも頑張っていきましょう」
「「はい」」
「それで…君達の席なんだが、二階堂くんは三浦君と大船君の間に座ってくれ。北条くんは稲村君の隣に。皆、彼らをうまくサポートしてやってくれ」
課長の支持で、二人は言われた席に座った。
「稲村さん…だよね、よろしく」
「…」
席に座るとき、潤一郎が小町に話しかけたが、小町は黙ったまま俯いていた。
…どうしよう、隣に男の人が座るなんて。
だが、そんな小町の心の声を課長は全く気付かず、話をどんどん進めていく。
「では、仕事に入ってくれ。今日もよろしく御願いします」
「御願いします」
そして、課長は小町の席に近づくと、追い討ちをかけるように言った。
「ここに慣れるまで、北条君は稲村君と、二階堂君は大船君とコンビを組んで仕事してくれ、頼んだぞ?」
「はい」
「…はい」
課長は、小町たちの返事を聞くと、満足そうに自席に戻った。
「ええと、何かとよろしく」
潤一郎は小町に話かけるが、その小町は困惑したような表情のままだった。
「小町?どうかしたの?」
そんな小町の様子を見かね、啓子が声をかけてきた。
「あ、べ、別に何でもないの。こめんなさい、北条君。人といっしょに仕事するのって慣れていないから…」
小町はできるだけにこやかな表情を見せながら言った。
「そっか。…よかった」
潤一郎は小町の言葉を鵜呑みして、ほっとしたように言った。
啓子はその様子を見て、安心したように自分の相手である由紀夫と話を始めた。
「私達も仕事をしましょうか?あの…悪いんだけど、この書類のコピーを御願いできるかしら?」
小町はそう言って、数枚の書類を潤一郎の席に置いたのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ