オリジナル長編

□ひだまり
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いつもと変わらない朝、いつもと変わらない毎日。
小町は更衣室で着替えながら、そう思っていた。
「おはよう、小町」
「おかよう、啓子」
隣のロッカーに大船啓子がやってきた。
スレンダーで長身、はきはきとした性格は、同期の中でもリーダー的存在だ。中背でやや小太りの小町とは対照的だ。
だが、どういう訳かウマの合う二人は、お互いを親友として頼りにしていた。
「おはよう」
その時、啓子の更に隣に、腰越静がやってきた。
小町や啓子とは同期で、色白の美人で男性社員におよくモテる。だが、その儚げな容姿に似つかわしくない程、性格は少々荒っぽい所がある。そんな性格が幸いしているのか、女性社員にもウケがよく、啓子とか喧嘩友達だった。
「おはよう、静。今日もギリギリね?」
「…うるさいわね。小町はともかく、啓子が早く来ているなんて、今日は雨が降るんじゃないかしら?困ったわ、今日傘を忘れてきたのに」
「…あんたは一言多いわよねっ」
啓子はぽかりと静の頭を殴った。
そして…静が日本人形のように黒くて長い髪を撫でながら啓子を睨んでいると。
「二人とも、早くしないと朝礼に間に合わないわよ?」
小町が二人の間に割って入った。
その時、漸く我に返った啓子が手をポンと叩き、小町の腕を掴むと、ドアに向かって走り出した。
「静、お先に!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、啓子!」
慌てて制服に着替えた静が二人の後を追いかける。
そんな風に慌しく、三人の所属する総務課のオフィスに到着すると、ちょうど朝礼の始まる頃だった。
「名物三人組、遅いぞ?」
課長が三人をたしなめ、早く席に着くように指示した。
「「「…すいません」」」
三人がおとなしく席に着くと同時に、始業のチャイムが鳴った。
「では、朝礼を始める。始めに、本日より総務課に所属となった二人を紹介する。北条くん、二階堂くん、自己紹介を頼む」
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