オリジナル長編

□恋愛事情
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ピピッ、ピピッ、ピピッ。
目覚まし時計が六時になり、起きろ起きろと鳴り出した。
由比は手を伸ばし、音を止めた。
月曜日の朝は眠たくて仕方がない。あと少し寝ていたい。
けれど、寝なおしてしまうと、遅刻してしまいそうだったので、由比はごそごそと起きだした。
欠伸を一つして、今日着ていく服を選ぶ。
いつもと変わらない朝。いつもと変わらない毎日。
退屈だけれど、平和で穏やかな毎日。
服に着替えながら、由比は今日一日の計画を思い浮かべた。
今日は朝から打ち合わせ。お茶を出して、コピーして、いつもと変わらない退屈な仕事の後、昼休みは同期の友子と食事して。…夕方も大きな事件がない限り、定時まで仕事して帰る、か。
由比はそこまで考えて、ため息を一つついた。
もっと刺激のある毎日が欲しい。
親友の美津子は大手の広告代理店に勤めていて、毎日色々な仕事に携わっているのに。
自分は一応一流と呼ばれる会社にいるが、普通のOLとして、お茶汲みとコピー取りの日々。お局様はうるさいし、課長のセクハラはあるし、毎日ストレスが溜まっていく。
…休んじゃおうかなあ。
由比は、ふとそう思ったのだが、ずる休みのできない性格の由比は、いつもの通り部屋を出て、トントンと階段を降りていった。
一階では由比の母が朝食の支度をしていた。
「おはよう」
テーブルに座りながら挨拶する。
「おはよう。ああそうそう、貴女宛に葉書が来ているわよ?」
母親は由比に、1通の葉書を差し出した。
それは、中学の同窓会のお知らせの通知だった。
それを確認した由比は、一瞬ドキッとした。
…中学時代。
それは、由比には忘れたくても忘れられない時代だった。
「どうしたの?早く食べないと遅刻しちゃうわよ?」
母の言葉にはっとして、由比は慌てて葉書を置いて、朝食を食べ始めたのだった。
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