みはえる
□キスをして夢の中へ
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バイトが終わって、
家に着いても
ミシェルからは連絡一つもなかった。
だから、もう、お別れのときだと思った。
最初のころに彼がプレゼントしてくれたネックレス。
失くしたりするのがいやで、特別な日にしかつけなかったソレは
もらった時とほとんど変わらない輝きを放っていた。
私の瞳から失った輝き。
いつもより少し、長く湯船につかって。
いつもより少し、入念に髪の手入れをして。
いつもより少し、綺麗になれるように。
さよならをするときは、
綺麗で居たい、女の最後のプライド。
鏡に映った、愛おしい彼ではなく、
一夜限りの相手につけられた赤い痕をぼんやり眺めた。
ネックレスを付けて、
布団にもぐった。
薄れゆく意識のなか、
ネックレスにキスをした。
ばいばい、みしぇる。