その他夢

□等身大の君でいて
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いつだって、強くて格好良くて。
いつだって、文句を言いながらも私のことを助けてくれた。
でも、自分が困ってる時は黙って、何も言ってくれなくて。
いつだって、京は私に何も教えてくれずに、私の知らない『何か』と戦っていた。


「なんだよ、んなとこで仁王立ちなんかしやがって」

「京の方こそ、何でこの間からコソコソどこかに黙って行っちゃうの? こんな怪我して。」

近寄ってバッと腕を引くと、街頭に照らされて何かで切ったような傷から止まりきってない血が流れるのが見えた。

京は隠してたつもりかもしれないけど、何年も側にいたらちょっとしたことでもすぐ気がついてしまう。
それがいつも心配してる恋人ならなおのこと。

「別に。お前に関係ないだろ
……バイクで転んだんだよ」

腕を払った京が、また再び腕を庇って傷を隠す。

相変わらず、下手くそな京の嘘が今は少し切ない。

でも、京の気持ちを考えると無理に聞き出すことも出来なくて私は何も言えなくなる。

京だって、本当は怖いくせに。

尊顔不遜で自信家で、口も大概悪くって。
いつも私のこと、子供扱いして。
私だって戦えるのに。
私を巻き込みたくないから、守りたいからって黙って何事もなかったように強がって……。

記憶喪失になった時の、妙に素直だった京がいつも抑えて隠してるもう一つの本心だったとしたら

隠さないで抑え込まないで、全部見せてほしいと思う。

どっちの京も、私の大好きな京だから。

でも、直接言葉にしてもきっと京は素直に頷くことはないだろう。
本当、意地っ張りで強がりなんだから。

だから、私は何も言わずに京を抱き締めた。

「何も言わなくていいけど、私だって京のこと守りたいんだからね。
守られるだけじゃ性に合わないってこと、知ってるでしょ?」

ぎゅっと背中に手を回して、ぽんぽんと叩く。

京は私よりも背が高いから、胸板くらいしか届かない。
本当はもっと包み込むようにしたいんだけど……

頑張って背伸びして抱き付こうとする私に、京が笑いながら背中に手を回した。
そして、覆い被さるようにぎゅっと抱きしめる。

「へっ、お前もなかなか言うようになったじゃないか。
そんなにいうなら、たまには甘えてやるかな。」

尊顔不遜で自信家で、気まぐれで適当で飽きっぽくて素直じゃない。
でも、そういうところも全部含めて京が好きだから。

「その前に傷の手当てしてからね。」

拗ねた顔した京の、怪我してない方の腕を引いて家の中に入る。


甘える京に半ば襲いかかられて、京が静おば様にこっぴどく叱られるのはそれから約数十分後のことだった。

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