The lost marriage

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「………ふぅ」




風紀財団の扉の前。

私はひとつ息を吐く。



今から他人となった恭弥と初めて対面するのだ。





「…よし!」



コンコン



覚悟を決めて扉を叩く。
だけど返事はない。

まぁそれは予想していたこと。
恭弥は例え中にいても基本反応しないと知っていたからだ。


だからもう一度数回扉を叩く。





「…誰」



すると扉の奥から声が聞こえてきた。
紛れもなく恭弥の声だ。

私は一度息を吐いて、感情を殺して言う。





「ボンゴレのお手伝いとして働いている水瀬沙羅と言います。

雲雀恭弥さん、まだ貴方にだけ挨拶をしてなかったのでしにきたのですが…」


「………………」




少しの沈黙後、扉が開かれた。

恭弥は少し睨みつけるような目で私を見ると、
何かを思い出したような、そんな表情で私に言った。





「君、昨日の…」


「あ…昨日は失礼しました!私、雲雀さんのことは前々からボスから聞いていて…。
私は知っている人のことをつい名前で呼んでしまう癖があったので昨日は…。

本当にすみませんでした!」




そんなのは全て嘘。


けれど記憶を失っている恭弥にとっては昨日してしまったことはかなり失礼なことである。

名前を呼び、手を握るなんて…今の私には出来ない行為。


私は恭弥に余計なことを言われないように必死で言うと、
あまり腑に落ちてないみたいだけど分かってくれたようだ。




「ふーん…まぁ僕はお手伝いに世話なんかされる柄じゃないから
君とはあんまり関わらないと思うけどよろしくね」


「……よろしくお願いします」




いつから私はこんなにも弱くなったのだろう。

“君とはあまり関わらない”、この言葉だけでズキッと胸が痛くなった。




でも、これは自分が決めたことなんだから




大丈夫、大丈夫、そう自分に言い聞かせた







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