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□一つ先へ進むには
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家に着いても考えるのはそのことばかり。


恭弥に言うべきだとは思う。


でも―…




ガラッ




「!」



その時、ちょうどそのことを考えていると玄関の戸が開いた音がした。

恭弥が帰ってきたのかな。


玄関に向かえば思った通りそこにいたのはやっぱり恭弥だった。




「…おかえり、恭弥」


「…………」




返事はない。

恭弥はそのまま私の横を通り過ぎて自室へと向かった。

私はそんな恭弥の反応にうつむいてしまう。



ほら、言えるわけないじゃん。


恭弥にこんな反応されて。



言えるわけないよ…!




私はしばらく玄関に立ちすくんでいた。
それと共にいろいろと考えてしまう脳内。




ああ、もう恭弥は私に愛想尽かしちゃったのかな。


もう私のこと、好きでもなんでもないのかな。




…なんて考えることはどんどん悪い方向になっていく。

でも本当にそうなのかもしれない。


そしたらーーー…



…駄目、これ以上考えたくない。

だけど頭では分かっている。



胸が、心が痛い。

そして目頭が熱くなっていくのを感じた。




「っ…」




一体私は



どうすればいいのだろう





どうすることも出来ず、目元から流れてきた水気を拭うだけだった。





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