Short

□一つ先へ進むには
1ページ/8ページ




「おめでとうございます」


「…え…」




場所は病院。
目の前には医師。


「おめでとう」の言葉に絶望を覚えた。





「3ヶ月目ですよ」


「え…もしかして…」


「出来ましたよ、お子さん」




ニコッと笑う医師。

そんな医師とは真逆に頭が真っ白になる私。





「う、そ…」



何も考えることが出来ない。

その事実が頭に入ってくることですら感じないほどに。


だけど脳は理解している。





私のお腹に




新しい命が宿ったと







その後の医師の対応は覚えていない。

私はただただこの事実に頭を真っ白にするだけだった。







「…………」



トボトボと歩いて帰る私。
帰る先は風紀財団、恭弥の家だ。

先ほどの事実が頭を巡りに巡っている。





どうしよう



まさか…まさか子どもが出来ていたなんて






普通の夫婦やもしくはカップルだったら喜ばしいことだろう。

最も私自身にとってはすごく嬉しい。


でも―…





ここ最近の恭弥のことを考えると嬉しいなんて言えなかった。








何故かと言えばここ最近、恭弥とは曖昧な関係が続いていた。

本来の関係は同棲している恋人。




だけど…


最近、恭弥の反応がどんどん冷たくなっていっていた。



キスも抱きしめたりもしなくなって、それ以前に「おかえり」と言っても「ただいま」と言う返事もない。

それが数ヶ月前…確か3ヶ月前辺りだ。



それが最近の悩みだった私はここ数日体調を崩してしまった。

吐き気が止まらなくて悩みすぎてストレスかなぁ、なんて思って病院に行ったら予想もしない結果。


まさか妊娠していたなんて。





「どうしよう…」



そんな状況の中で恭弥に言えるわけがない。

じゃあどうすればいいのだ。


結局どうすればいいのか決められないまま家に着いてしまった。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ