さいど

□嘘吐きだって輝ける。
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ピンポンという規則的な音をたてて玄関のベルを鳴らす。訪れたのは新羅のマンションだった。

「あれっ、静雄?どうしたのわざわざ」

ガチャリと開かれた扉の向こうで、新羅が目を丸くして立っている。

俺が何も言わずに待っているとすぐに家の中に入れてくれた。
表情からして、俺がここへ来た理由をこの短時間で理解したらしい。
流石に長い付き合いなだけはあるが、同時に俺にも一つ分かったことがあった。

新羅は何か隠している。

それが何なのかはわからなかったが、あえて触れようとはしなかった。





「まあ座りなよ。臨也のことでしょう?」

俺がソファに腰掛け、頷くのを見届けると肩をすくめて呆れた顔をした。

「ショックなのはわかるよ。でもあいつ…結構本気みたいだしさ…認めてやってよ」

「…いきなり言われてもわかんねぇだろ。そんな大事なこと何でもっと早く…」

目頭が熱くなり、気を抜くと零れてしまいそうになる感情が邪魔をする。

「…っ、わり……」

「し、静雄…大丈夫?」

やたらおどおどしながら、新羅に顔を覗き込まれた時には既に涙腺が決壊していた。

「静雄…あの…ね、」

新羅が何か言いたそうに口をこわばらせるが、そんなことを聞く余裕は無い。

「…邪魔したな。もう行くわ」

俺はすぐさま立ち上がり、新羅の家を出て行った。

このままじゃ式に参加出来そうもない。
こんな気持ちのまま祝いの席なんかに出れない。ましてや臨也の結婚式だなんて。

まだ式までは一週間以上あるんだ。
俺が諦めればどうとでもなる。
極力臨也には会わないようにしよう。
仕事以外で外へ出歩くのは控えよう。







そして時はついに前日にまで迫る。

  
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