へたれ一之瀬の奮闘記

□二話目!
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ボーッとして、先生の話を聞き流す。
でも、正確には違う。
あの子のことを考えているからだ。

あの子は誰が好きなのだろうか?
それを知れば少しはあの子を諦められる気がする。
あの子に問いてみても、あんまりそういうのはさ…、とはぐらかされてしまう。
でも、好きな人を知りたいと思うと同時に知りたくないとも思う。
きっと、それはあの子が好きだから。
好きでいたいからだ。


「はい、皆。転校生を紹介します」


ああ、ホームルームが長いと思えば、転校生がいるからか。
そして、俯いて思考にふける。
あの子のことをずっと考えていたいからだ。


「隣になりましたんで、宜しくね」


その声が聞こえ、前を見る。
先生がいない。
ホームルームが終わっていた。
そして、話しかけてきたと思われる隣の存在を確認しようとする。
が、ふと考えた。
俺の席に隣はいない。
そういえば朝、机と椅子が増えてたな。


「カズヤ、どうしたの?恋煩い?」


その声で、途端に記憶が呼び戻される。
そして急いで、その相手を見る。


「っ!?フィ、フィディオ!?な、なんでここに!?」

「留学だよ。つか、やっと気づいたんだ?そんなにシンイチのこと考えてたの?」

「な、なな何を言い出すんだよ、フィディオ!?」


そうやって慌てて否定すると、フィディオは可笑しそうに笑う。
昔からそうだった。
よく、フィディオにからかわれてたなぁと思い出したら、少し懐かしいと感じた。
そして可笑しいとも感じた。
あの子以外のことも覚えれてたんだなぁと思ったからだ。


「カズヤは相変わらず、だね」

「悪かったな…」


俺は悪態をつく。
すると、フィディオはなにか思い付いたかのような笑みをうかべる。
嫌な予感がする。
俺はその場から離れたい衝動に駆られた。が、既に時は遅し。
腕を掴まれ、逃げるのを阻止されてた。


「で、カズヤ。シンイチに想いは伝えたのかな?」


まるで鬼神のごとし。
そう思えるような笑顔でフィディオは問いかけてきた。
俺は身の危険すらも感じたので素直に首を横に振る。


「ちっ!!…このヘタレチキンが…………」


フィディオが、怖い。
果てしなく、怖い。
そういえば、周りは何をしているのだろうと気になり見てみる。
すると皆、距離を離して我関せずという感じで過ごしてる。
皆も怖いのだろう……
クラスメイトと目があった。
そして、すまなそうに目を逸らされた。
ああ、俺の味方はいないのだろう。
何故、円堂と同じクラスでないのだろう…
もしくは、半田。
せめて、土門。
この内の誰かが同じクラスであれば少しは変わったのかもしれない。


「……オレたちが夏までフォローしてあげるから、告白しなよ!!」


と、フィディオは他言は許してくれそうもない感じで言う。
って、俺たち?


「え、と、フィディオ?あの」

「ほら、着席しろ!!授業だぞ!!」


間が悪く、授業の時間になったらしい。
しかたない、俺たちは受験生だ。
真面目に授業を聞かなければならない。
そう思いつつ、俺は教科書を出す。








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