Short story

□だれもしらないおとぎ話
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真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白な絨毯。
その中央には真っ白な天涯付きのベッド。
そこに座る少女も白く、神聖な巫女のようにも見えた。

「誰?」
胸ポケットから取り出した写真には、利発そうに笑う6つほどの少女が写っていた。
歳を重ね大きくなっているものの、ぽってりとした唇や、口元の黒子、柔らかな顎のラインが、彼女は写真の少女と同一であると告げていた。
「本田美鈴ちゃんだね」
優しい声音で問いかけると、少女は不思議そうに首を傾げる。
「私はコハクよ」
好奇心に満ちた笑みを浮かべると、捲くし立てるようにしゃべりはじめた。
「お連れの方とはぐれてしまったのかしら?ここには来てないわ。お父様以外の方がみえるなんて本当に久しぶりだもの。時間はあるかしら、さあさ、早くこちらへいらして。少し遊んでいってちょうだい」
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