夢見鳥(仮)

□傷跡
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シルヴァは緩みがないか確かめるようにロープを指で軽く弾いた。
「さ、はじめようか」
ロープを取り出した引き出しから、続いて取り出してきたのは鞭だった。
「……………う……そ」
シュゼットにもそれが鞭だと分かる。
自分に振るわれることも。
顔が引きつる。
―こわい
ただ、ここから逃げるすべなどない。
悲鳴もあげられない。
瞳から涙がこぼれ落ちた。
「泣かないで。まだ、だよ」
そういいながらシルヴァはシュゼットの背後に回る。
それに合わせてシュゼットも後ろを見た。
すると、困ったように笑いながら、服のポケットからハンカチを取り出す。
「見たらつまらないでしょう」
シュゼットの目に当て、頭の後ろでぎゅっと縛った。
「いやっ!とって!……ねぇ…」
首を振るが、それで目隠しが取れるはずもない。
足元から、恐怖がせりあがって来る。
前の悪夢が脳裏に浮かぶ。
「やだっ!誰か!いやぁっ!」
半狂乱になって叫ぶ。
叫ばないと、闇に飲まれてしまいそうだった。
「…………ぁ」
シルヴァの手が頬に添えられる。
知らない間に、シュゼットの正面に移動していたようだ。
震えが止まらない。
「や……だ……、たすけて……」
口から呟きが漏れる。
「まだ何もしてないのに」
面白がるような響き。
「おねがい……」
「止めないよ」
瞬間、キスがシュゼットを襲った。
「んんっ!……ん…っ!」
舌が絡められる。
「……んっ………ぅ」
逃れようと首を必死で振るが、シルヴァの手によって阻止される。
「………ん……ん…」
混じり合った唾液が、顎を伝い、椅子に染みを作った。
どれだけ時間が経ったのだろう。
ようやく唇が離れる。
「…はぁ………」
笑ったような気配がした。
「痛いのは好き?僕は好きだけど」
右耳に顔が寄せられ、囁かれる。
幼い口調に、低く冷たい声。あまりにもアンバランスだった。
シュゼットはぎょっとして、その方向に顔を向ける。
見えないせいで、感覚が鋭敏になってる。
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