もう1つの世界

□いつだって輝かな*
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「ねぇ、タケシ」

「ん?」



「ありがとう」


笑顔を浮かべながらの思いがけない彼女の科白にタケシは不意を突かれた。

「…どうしたんだ。急に改まったりして」

「べっつにー!ただ言いたかっただけ!!」


不思議そうにそう問いかけたタケシは穏やかな笑みを浮かべている。
それを見てヒカリは頬を緩めた。

言葉数が足りなくても、彼は自分が伝えたかったことをちゃんとわかっているだろうから。



『じゃあ、一緒に行こうよ!!』


あの日、初めてサトシとタケシに出会って三人で始めた旅。

彼等に会わなかったら、ハルカやシゲルにだって会えなかった。
サトシとタケシの話によれば、どうやら二人の他にもまだ自分の知らない彼等の”仲間”がいるようだし。


”全ての命は別の命と出会い、何かを生みだす”


自分達の出会いは偶然だったのかもしれない。


――でも、あたしはそうじゃないと思いたい



まだ、全然想像つかないけれど。

出会いと別れを繰り返しながら。
皆、色々なことを経験をしながら成長していくのだ。


未来へ向かって。



「タケシ!お互い夢を叶えようね!!」

「ヒカリ…」


まだ幼さを残すあどけない笑顔。
いつかは彼女も素敵な女性へと成長していくのだろう。

トレーナとしても、人間としても。

自分は彼女の父親でもなければ兄でもない。
けれど、これからも見守っていきたい…そう思っている。


――そして……”アイツ”のことも


目の前の少女に対するものとは少しばかり異なる想いも抱いているけれど。

見守っていきたい。
支えていきたい。

自分が彼の傍にいられる間は。


「あぁ、そうだな」


おやすみなさい。

お互いに心の奥が暖かくなるのを感じながら。
二人は笑ってその場を後にした。


いつかの、未来への約束
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