もう1つの世界
□それが、願い*
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最初は単に自分の気のせいだと思っていた。
その変化は本当に、本当に小さなシグナルで。
もしかしたら、本人達も気が付いていないのかもしれない。
いつからだろう。
キミの視線の先があの人に辿り着くことが増えたのは。
いつからだろう。
あの”お約束”を苦笑を浮かべて見守るキミの表情に小さな陰りが見え始めたのは。
いつからだろう。
あの人の、キミを見守る目が温かくもどこか切なげに見えるようになったのは。
ねぇ、2人は気が付いているのかな。
ずっと、一番近くで見ていたボクだからわかるんだ。
ちょっとだけ離れていた時期もあったけど。
ずっと、一緒に旅をしてきて。
そうして、ずっと一緒に並んできて。
2人の間を纏う空気に小さな、それでも確かな変化が起き始めたのはいつからだっただろう。
想いを想いと気付かずに胸の奥に閉じ込める彼と、
想いを想いと気付きつつも胸の奥に閉じ込める彼。
――きっと、大丈夫だ。
もしかしたらこの先、大きなすれ違いが起こるかもしれない。
優しすぎる、二人だから。
けれど、ボクには見守ることしかできない。
そして、これはたぶんボールの中にいる”彼”も同じ気持ちだと思う。
――笑いあう二人がボクは好きなんだよ。
願わくは、互いの気持ちが通じるその日まで。
(ボク達が一緒にいられますように)