もう1つの世界

□いつだって輝かな*
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『惹かれあってしまった

鳥の王国に住むムクバード王子と、 

花の城に住むチェリンボ姫は、

互いの環境ゆえに生じた周囲の反対も押し切って、

手を取り合い、安住の地を求め故郷を飛び去ったのでした……』


――

―――

――――――

―――――――――


「……素敵〜」

ほう、と息を吐き未だうっとりとした眼差しをテレビ画面から離さないヒカリに同じく画面を凝視していたタケシは相槌を打った。


「要するに愛の逃避行というやつだな」

「空からの景色を知らないチェリンボ姫をムクバード王子が背中に乗せてあげるシーン、カッコよかったなぁ〜」

余韻に浸るヒカリの脳内では幾つもの感動シーンがリピートされていた。

けれどその繰り返しは彼の突然の一言により、途切れることになった。




「笑って再会できたらいいのにな」

「…え?」


それは独り言にも似た声色。

驚愕してその声の持ち主を見遣る。
自分に向けられている視線に気付き、タケシはテーブルに置かれていたコップや皿を片付けながら再び口を開いた。


「愛する者と一緒に逃げても、もし万が一何かあった時、彼等には帰る場所が…助けを求める場所が無いだろ?」

「…あ」

「それを考えたら、さ。例え今はわかりあうことが出来なくても…いつの日か赦される時が来ればいいな、ってね」


そんなことを考えていたんだ。
そう笑いながら話す姿にヒカリは思わず唖然としてしまった。


「…そう、よね。いつかは王子様とお姫様の間には子供が産まれるもんね。
自分の子供が皆に見せられないなんて…なんだか可哀想ね」

「まぁ、ドラマ上の話だけどね」


食器も洗い終わり、タケシは再びソファへと腰を下ろした。


「ヒカリ、何か見るか?」

「ううん。いい」


プツン―。

テレビが消され、辺りは静寂に包まれる。
ちらりと見れば俯いて何かを考え込んでいる様子のヒカリ。

余計なことを言ってしまったな、とタケシは苦笑を浮かべた。



「なぁヒカリ…」

「未来に」

「…?」


さっきのことは気にしないでくれ。
そう言おうとしたタケシの言葉を遮ってヒカリはぽつりと呟いた。


「いつかは、あたし達も大人になっていくんだよね」

「え?……まぁ、そうだな」

「あたしやタケシ、サトシ…ノゾミやハルカはその時どうしてるんだろうね」

ヒカリは顔を上げ、窓の外を見つめた。


まだ見えぬ、想像もつかない未来。
遠いその未来に、ちゃんと自分はトップコーディネーターになれているのだろうか。

不思議そうに自分を見つめている、自分が兄のように慕っている青年の未来は。

『ドラマとか興味ないから』
そう言って今頃は二階の部屋でぐうすかと寝ているであろう少年の未来は。


まだ、全然想像つかないけれど。
このシンオウの旅が終わった時、自分達はどうしているのだろう。

時々だけど、ふいにそんなことを考えたりする。
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