もう1つの世界

□きっと もっと ずっと*
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キミのことが大好きだ。
ずっと一緒にいたいと思ってた。

でも、ボクには大切なコができた。
ずっと一緒にいたい、守ってあげたい……そう思った。


それは、キミとのさよならを、意味していた。



「ほら。彼女が呼んでるぞ」

ぶっきらぼうにそう言って。
そんなキミの表情は影を落としていて。
ボクには、キミがどんな顔をしているのかわからなかった。

背を押されるように、ボクは彼女の元へと羽ばたいた。


「バタフリー!」

「仲良くなー!」

「ピィカァチュー!」

マスターとは違うトレーナーだけど、この恋を応援してくれて。
笑顔で見送ってくれた2人と。

涙を浮かべながら手を振ってくれた大切な友達。


だけど……。


俯いたままのキミ。

言いたいことが、たくさんあった。
本当はそっと寄り添いたかった。


そのキミから、ボクは静かに背を向けた。






ぼーっと突っ立っていただけかもしれない。

でも、ボクを見つめるキミに抵抗しようという気は起きなくて。
そのまま、投げられたボールに入れられた。


その日からボクはキミの”友達”になった。


初めてのバトル。相手はひこうタイプのピジョン。
自分の天敵と言ってもいいくらいだ。

ひたすら追いかけまわされた。
ボクは逃げ惑うことしか出来なかった。

キミの声が聞こえてとっさに反転した。
でも、やっぱり怖くて。
ボクは何も出来なかった。

木にぶつかり、ボロボロになってしまったボクをキミは慌ててボールに戻したよね。



…ごめんね――。


ボールの中でボクはもの凄く落ち込んだ。
体より心の方が…ずっとずっと痛かった。


(初めて、自分の無力さを知った)



ある日突然スピアーの群れに襲われた。
トランセルに進化していたボクは動くことが出来ず、そのままスピアーに攫われてしまった。

気がつけば辺りはコクーンにスピアーばかり。



――大丈夫、助けに来てくれる。


そう信じていた。疑わなかった。
だけど……その日、とうとうキミは来てくれなかった。


――嫌われた…?

――捨てられた…?


色々な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消え……その度にボクはどうしようもない気持ちになったんだ。


(初めて、キミを疑った)
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