もう1つの世界
□たったそれだけ*
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真夜中、ふと目が覚めた。
暗い天井が視界に入る。
嫌な夢を見たわけでも、トイレに行きたくなったわけでもない。
ぽっ、と目が覚めてしまっただけ。
天井を見つめながら何度か瞬きを繰り返していると、ぱらり、と紙のめくれる音がした。
音のした方に顔だけを向ける。
ベッド横、机の上に置かれているスタンドの白い光がタケシの横顔を照らしていた。
自分は横になっているため、彼が何を読んでいるのかはわからない。
けれど、その”何か”を読む姿が凄く、大人びていて……。
思わずドキッとした。
――なんだろ。なんか……。
体の奥にむず痒さが走る。
けれど、自分にはこれが一体何なのかわからない。
「……ケシ」
ただ名前を呼ぶだけなのに。
自分でも驚くほど掠れた声が出た。
少しばかり驚いた様子でタケシが視線を本からサトシの方へと移す。
「どうした?」
優しい声でそう問いかける。
また、むず痒い感覚が走る。
無言のまま、サトシはむくりと起き上った。
そのままベッドから降りると裸足のままタケシの所へと歩み寄る。
「……サトシ?」
視線は交わっているのに、少しばかり見上げて見えるその表情からは何も読みとれない。
何も言わず、ただ立ちつくすサトシをタケシは心配そうに見つめる。
「どうし……」
言葉が、途切れた。