もう1つの世界

□遠ざかる背
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「ねぇ、サトシ。ホントにいいの?」

ここはポケモンセンター。
今、俺達は夕食を取っていた。
けれど、目の前の2人の空気が何だか重いと感じる。
料理を突っつくもののそれを口に運ぼうとしないサトシと、それを心配そうに見つめるヒカリ。

何故、こうなっているのか。
話は数時間前に遡る。


昼間、サトシは”最強のピチュー・ピカチュウ・ライチュウ”を揃えると豪語するショウというトレーナとバトルをした。

ショウはライチュウで。
サトシはピカチュウで。

技の威力は互角。
けれど、圧倒的体力の差によりピカチュウは負けてしまった。

特に至近距離での”はかいこうせん”が相当なダメージになったらしく、ストレッチャーの上で苦しそうに横たわるピカチュウと、ショーイさんが慌ただしく電極パドルを操作している様子を俺達は外から見守ることしか出来なかった。

視線を隣にずらすと、涙を浮かべながらピカチュウ!と叫ぶサトシの横顔があった。

そんな彼の様子を見つめながら。
俺はずっと前に、今と似たような出来事があったのを思い返していた。







あの時も、ライチュウとのバトルだった。
進化前とその進化系による初めてのバトル。

体力の差、攻撃力の差……何もかも相手の方が上回っていた。
勝負がつくのにさほど時間は掛からなかった気がする。

10万ボルトをまともにくらい、地面に倒れた小さな体。

俺もカスミも……サトシも大慌てでピカチュウの元へと駆け寄った。

そのまま走ってポケモンセンターまで行って……その後は、ただただ見守ることしか出来なかった。


今と、同じように。
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