もう1つの世界
□それでいい、それでもいいと思いながら*
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自覚はしていた。
けれど、この想いを口にすることは決してしないと自身の心に誓っていた。
チクリと痛む胸。
モヤモヤと渦巻く黒いモノ。
お前が、他の誰かと親しげに話をしているのを見る度に軋む心。
飽きもせず、何度も何度もそれを繰り返す己の弱さに、どうしようもなく苦笑する。
いっそのこと、伝えてしまった方が楽なのかもしれない。
そう思えてしまうことが何度もあった。
でも結局、どんなに自分が苦しい思いをしてもそれだけはしないと言い聞かせ、封じ込める。
俺が自分の気持ちを伝えたら…アイツは……サトシはどう思うだろう。
嫌うだろうか俺のことを。
そのまま、距離を取るのだろうか。
それでいいと思う。
困ったように笑いながら、やんわりと断るのだろうか。
それでも、お前の傍に居続けることを許してくれるのだろうか。
それでもいいと思う。
様々な予想を立てては、首を横に振る。
――何を考えているんだ俺は。
嫌われようが、許されようが。
結局のところサトシを困らせてしまうことに変わりは無い。
――困らせたくない。
笑っていてほしいと思うから。
俺は笑っているお前が好きなんだ。
だから……。
(笑顔で駆け寄るキミに微笑んで)