もう1つの世界
□わかってた それでも、*
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無鉄砲で、
自分のことは一切省みないヤツで、
無茶をするなんてことは日常茶飯事で、
後先考えずに前だけ見て走って行ってしまうお前は……
ブレーキを掛けることなんてないまま、自分達の頭上をワゴンが飛んだ。
それは、ほんの一瞬のことだった。
「サトシ!!」
上を向いたらサトシがいた。
正直、自分の目を疑った。
なんでそこにいるんだ、と思った。
目は合わなかった。
サトシ自身はしがみついたまま落ちるまいと必死だったようで。
彼の姿を捉えることが出来たのはほんの一瞬。
ワゴンはあっという間に走り去ってしまった。
「あぁ〜また逃げられちゃう!」
悔しそうな、困ったような声で叫ぶヒカリの横で、俺は呆然とポケモンハンターJの船を見送ることしか出来なかった。
ピカチュウがJに奪われた
わかっていた。
だからこそ、アイツが無茶をすることもある程度の予測は出来ていた。
――だけど、1人で乗り込んでどうするんだ!
相手は大人。
それも、闇の世界に生きる犯罪者だ。
――もし、何かあったら……
大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながらも募る不安は消えない。
そしてそれは止まることを知らぬかのように次々湧いてきては胸の奥に痛みを残していく。
だけど、今の俺には、ただただ無事を祈ることしか出来なかったんだ……。