もう1つの世界

□悪戯心
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「あ!サトシとピカチュウだ!!」

ふわふわと上昇していく気球に乗って、俺達は時空の塔頂上を目指していた。
その途中、随分疲れている様子のサトシとピカチュウを見つけた。


「あぁー!お前ら!!」


ヒカリの呼び声に気がついたサトシはこちらを見るなり唖然とした顔を向けた。
その肩に乗るピカチュウも同じ顔をしていたもんだから、思わず笑ってしまった。

乗せてってくれー!と手を伸ばすサトシに申し訳ないなと思うものの、実際どうすることも出来ない。
気球から見える2人の姿は見る見る内に小さくなり……とうとう見えなくなった。


「……あーあ。見えなくなっちゃった。一緒に歩いてればサトシも気球、乗れたのにね!」
「サトシくんには悪いことしちゃったわね」
「そうだね」
「まぁ、あの2人ならすぐに追いついてきますよ」

苦笑を浮かべるアリスさんとト二オさんには笑ってそう答えた。
きっと今頃、どちらももの凄い顔であの長い階段を駆け上っているのだろう。
想像しただけでまたクスリと笑みがこぼれた。

昨日の件もあり、俺はサトシの体調を多少なりとも心配していた。
けれど、『どこもなんともないぜ!』と本人が元気に言っていたのだからその心配は無いのだろう。

ただ、あの後。
何かを考え込んでいるようなサトシの姿を自分は何度か目にしていたのだが……。


――まぁ、うん。そうだな。


小さな引っ掛かりを抱きつつも、今それを自分が云々と考えてもしょうがないのだろう、きっと。

それに今……。
俺は、自分が意地の悪い笑みを浮かべているのを自覚していた。


――さっきの顔は本当に情けなかったなぁ〜


気球はふわふわと上昇を続けていく。
頂上は、もうすぐだ。

自分達が頂上に着いてから、アイツはいつ頃やってくるだろうか。
その時、どんな顔をしているだろうか。


そんなことを考えるだけなのに……。


――想像しただけで笑えるな


改めて重症だと自覚する想い

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