小さな世界

□零れ落ちるのは
1ページ/1ページ


『本部に預けているボールを転送してほしい』


そう思うのは当然のことだろ?

”今後の活動面において必要だったから”

それが理由



本当に……?




『……連れてこなくて、良かった』


小さく呟いた声
たぶん、届いている、と思う
後ろにある気配が、消えていないから


――はは、”気配”だなんて…


ほんの少し前までは”読む”なんてこと、まるで忘れていたというのに


『あいつ等を、悲しませるだけだ』


同じようでまるで違うのだ
今自分達がしていることは…全部

それに、此処での自分達は追われる身だ
指名手配という名の追手から逃れるために

ひっそりと隠れ過ごす毎日
気を抜くことが出来ない毎日

そんな日々の生活

……そんなもの、あいつ等にはさせたくない



『恐らく、すぐには戻れないわ』

『あぁ』

『…先に戻ってるわよ』

『あぁ』




あれからどの位経っただろう

寄り掛かっていた岩壁から背を起こす
見上げた空には沢山の星が瞬いていた

その輝きが何故か苦しく感じる
野宿なんて、今まで散々してきたことなのに…


――何故…だって?


「……はは」

考えたら笑えてしまった
馬鹿だ、俺は

ああそうだ
自分の気持ちなんてものは自分が一番わかってる

あの時、ボールの転送を頼んだのは確かに活動面での理由もあった


だけど、一番の理由はそれじゃない


「俺、は…ッ」


ただ、


「ほん…とは…」



――会いたかったんだ……!



”イッシュ地方の征圧”

いつ終わるのかもわからない作戦
けれど、やり遂げなければならない重要任務

全ては、サカキ様のために




やり遂げてみせるさ

俺達、3人の力で

頑張るから



……だから



『マネマネ♪』

『キッパァ〜!』


「……マネネ…マスキッパ…」


どうか、今だけは
こんなにも情けない自分を、許してくれ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ