もう1つの世界

□Dear Best Friend
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長い付き合い。阿吽の呼吸、とでも言えるだろうか。
さすがに一番のパートナーには敵わないが、時には言葉に出さずともその表情を見ればお前が何を思っているのか、考えているのか、その心の内を読むことができた。

いつからかという明確なことは分からない。
けれど共に過ごす時間の中、互いの間で通じるようになっていたらしい。
そのことを意識した時はふわりと心が温かくなった。

それは恐らく昔の自分にそういう存在がいなかったから。
早いうちから大人にならざるを得なかったからだろう。

ジム戦に挑みに来た多くのポケモントレーナー達。そこには性別も年齢も職業も関係ない。そんな彼等とのバトルは短い時間の中でも非常に有意義なものだったと思う。

それでも…ジムを後にするその後ろ姿を見送る時、心の奥底に仕舞い込んでいる筈の感情が度々顔を出した。

羨ましいという気持ち。
見たことのない広い世界に出たいという願い。

思ったところでどうすることも出来ないその感情の捌け口を見つけられずに苦笑を零してばかり。
そんな生活はこの先もずっと変わらないだろうと思っていた。

だからこそ、あの日のことを俺はずっと忘れないだろう。

諦めていた道に光を照らしてくれた。
改まって言葉にしたことはないが心から感謝している。

『たのもー!』

あの日、もしもお前が初戦で勝っていたら。あるいはニビジムへの再挑戦をしてこなかったら。
自分の未来は随分と違っていたかもしれない。

お前は気付いていないだろう。
あの時の出逢いがあったから今の自分がいるのだ。

新たな夢の為に。
そしていつかまた隣に並ぶ日の為に。


――俺も進むよ。


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