最もふざけた部屋
□太陽がまた輝く時
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雨の音が聞こえる。
何度も夢に見る。
忘れられない、あの日の記憶。
新しい名前を授かって、歩き出したというのに。
輝く太陽のような人が僕に道を示してくれたというのに、拭えない傷はこうして時々滲み出してくる。
「忘れたと…思ったんだけどな」
夜中の雨音に目を覚まして、僕はため息混じりに呟いた。
隣で眠る不機嫌な彼を起こさないように。
雨が降り出す前に町に着いた。
それは運が良かったのだけど。
夕食時、雲行きが怪しかったせいか、部屋割りは有無を言わさず三蔵が決めた。
「悟空と河童は入り口側の部屋、俺と八戒は宿の奥の部屋にする」
悟空は悟浄との相部屋に不満がありそうだったけれど、いつにも増して不機嫌そうな三蔵に反対はできなかったようだ。
僕らの部屋は、表の雨音があまり聞こえないような場所にあった。
ぶっきらぼうな彼が、僕に気を使ってくれたのが素直に嬉しい。
でも、だからこそこんなことで心配はかけたくないのに。
三蔵だって雨は苦手なのに、僕ばかり甘えるわけにもいかない。
「いつまでもコレじゃあダメですよね…」
目を覚ましてから、何度めかのため息をついた時、なんとはなしに隣のベッドをぼんやりと眺めた。