平安の恋

□光は愛でるモノ -天-
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「もっくん、ほら早く行くよ!」

「おーぅ」




今は家路を歩いている。


あれから、数年。

世界を光で溢れさせてくれた嬰児は、元服を迎え雑用係だが立派に仕事をこなしてる。


「ねぇ、もっくん」


「ん?何だ、昌浩」


「一緒に居てくれてありがとう」


「……ッ、そうか/////」



白い異形の大きな猫か小さな犬のような大きさで、首の回りに赤い突起。
うさぎのように耳は長く、額には赤い花のような模様のある姿になっている俺は、顔を逸らした。






顔が赤い。






昌浩は……、俺を救ってくれた嬰児と過ごすうちに、俺は…………








理を犯した…











神将の理ではなく……











男としての理をだ……










「昌浩」


「え? 何−……ってわあぁあああ!」


もっくんがいきなり本性に戻り、昌浩は慌てて結界を築き上げた。


ざんばらな赤い髪、逞しい体屈、金色の輝く瞳、唇から犬歯が見える。


額には、金冠があり、神気に輝く。



そしてその神気は、水面に咲き誇る紅の蓮のよう





「びっくりしたー


紅蓮の神気は強いから、徒人にも見えるんだよ!


それで、大騒ぎしたらじい様にまた馬鹿にされるか怒られるじゃんかーッ」

昌浩の姓は安部昌浩。
大陰陽師・安部晴明の孫にして、唯一の後継者。


紅蓮は、そんな晴明の式神であったが、その任を外れ、昌浩の元にいる。


強すぎる神気は徒人にも見えて、皆「鬼だ!」と混乱し、迷惑をかけてしまう。

だからこそ結界を築き上げたのだ。


様子のおかしい紅蓮に気づいてか、昌浩は紅蓮の顔色を見る。


「どうしたんだ?


紅蓮?」












「………好きだ」


「え?」












俺が犯した理……










男であるのに、男を好きになってしまったこと。






神と人であり、男と男。







−決して、好きになってはならない−





だけど、俺は……




「昌浩、俺はお前が好きなんだ」







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