平安の恋
□光は愛でるモノ -天-
3ページ/5ページ
「もっくん、ほら早く行くよ!」
「おーぅ」
今は家路を歩いている。
あれから、数年。
世界を光で溢れさせてくれた嬰児は、元服を迎え雑用係だが立派に仕事をこなしてる。
「ねぇ、もっくん」
「ん?何だ、昌浩」
「一緒に居てくれてありがとう」
「……ッ、そうか/////」
白い異形の大きな猫か小さな犬のような大きさで、首の回りに赤い突起。
うさぎのように耳は長く、額には赤い花のような模様のある姿になっている俺は、顔を逸らした。
顔が赤い。
昌浩は……、俺を救ってくれた嬰児と過ごすうちに、俺は…………
理を犯した…
神将の理ではなく……
男としての理をだ……
「昌浩」
「え? 何−……ってわあぁあああ!」
もっくんがいきなり本性に戻り、昌浩は慌てて結界を築き上げた。
ざんばらな赤い髪、逞しい体屈、金色の輝く瞳、唇から犬歯が見える。
額には、金冠があり、神気に輝く。
そしてその神気は、水面に咲き誇る紅の蓮のよう
「びっくりしたー
紅蓮の神気は強いから、徒人にも見えるんだよ!
それで、大騒ぎしたらじい様にまた馬鹿にされるか怒られるじゃんかーッ」
昌浩の姓は安部昌浩。
大陰陽師・安部晴明の孫にして、唯一の後継者。
紅蓮は、そんな晴明の式神であったが、その任を外れ、昌浩の元にいる。
強すぎる神気は徒人にも見えて、皆「鬼だ!」と混乱し、迷惑をかけてしまう。
だからこそ結界を築き上げたのだ。
様子のおかしい紅蓮に気づいてか、昌浩は紅蓮の顔色を見る。
「どうしたんだ?
紅蓮?」
「………好きだ」
「え?」
俺が犯した理……
男であるのに、男を好きになってしまったこと。
神と人であり、男と男。
−決して、好きになってはならない−
だけど、俺は……
「昌浩、俺はお前が好きなんだ」
.