ネコ伝

□ひらひら
2ページ/3ページ

その殺気はエリス家の者に比べれば弱い

だが、隠しているのは解った

隠しても隠しきれない程の殺気なのか

それとも、わざと滲み出しているのか

後者だとすれば、かなりの力量の者だ

そうこう考えていると、ジェルメに呼ばれた

近づこうと足を動かした瞬間

彼女の姿が消えた

「ふっ!」

「お、」

消えたように見える程早く動いたのだが

ライナには、見えていた

ペリアの事を突き飛ばし

放たれた拳を受け止める

それを受け止めた時、微かに痺れが走った

「ここの挨拶っていきなり殴ることなの?」

「そーよ」

と、言いながら蹴りを放ってくる

攻撃パターンがピアと一緒だということから

挨拶というのはあながち嘘ではない、というのを理解する

蹴りを避けるのに距離を取ると、

狙っていたかのように凄いスピードで迫ってくる

「こういうタイプ、好きかも・・・っ」

宙でクルンと体を回すと、その勢いで尾が鞭のようにしなる

その尾の動きに怯んだ隙に、一気に距離を詰め

「ほいっと」

関節を極め地に倒す

「痛っ・・・合格。ウチで訓練させてあげる」

「うえ?って事は俺試されてた?」

「そういう事」

彼女の腕から手を離し、立ち上がる手助けをする

「本気出して損した・・・」

そのまま踵を返した瞬間

「もらった!」

ジェルメは、今までの動きの比にならないくらいの早さで動いた

彼女の手は、真っ直ぐにライナの喉を狙っていた

「無駄だよ」

ライナは彼女の攻撃をかわし、逆に喉を締め上げた

「簡単な嘘に引っかかったら駄目なんじゃない?」

「(な・・・っ)」

今まで一欠片も感じなかった殺気がライナの体から放たれる

それも、ジェルメが動けなくなる程の、鋭いものだ

「(この動き・・・どこで訓練を!?)」

手から逃れようともがいた時、

彼女の目に、ライナの首のチョーカーが映った

それで全部理解した

「と、りあえず・・・この、手を」

「ごめん!」

するりと手が離れ、地に倒れる

それと同時に酸素が肺に入ってきて、むせた

それが落ち着くのを待って、指示を出した

「ペリア!」

今まで、呆然としていたペリアが我に返り走ってくる

「ライナを、あんたの隣の部屋に」

「はい。行こう、ライナ」

「え、あぁ・・・」

小走りで去っていく子ども達を見送って

ジェルメは小さく呟いた

「手加減したわね・・・」

しかしまさか王子の関係者とは

落ち着いているように見えるが、実は内心驚いていたのだ

ライナの首についている赤いチョーカーと鈴は、シオンの腹心の証

それを知っているのは、腹心同士だけ

つまり、ジェルメもシオンの仲間なのだ

彼女の尾にも、鈴がついている

だが、渡された書類には、名前と黒猫

それしか書いてなかった

だから彼女は、ライナの事を・・・

「女の子かと思ってたのに・・・」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ