ネコ伝

□てんてん
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「ルーク・・・ねぇ」

「えぇ、よろしく」

シオンは、ミラーの紹介でルーク・スタッカートと会っていた

まだ若いというのに、紙は白

ニコニコと笑う彼は、何を考えているのか解らない

体は細身で、一見弱そうで頼りないが

ミラーがつれて来たのだ。レルクスまでとはいかないが、そこそこ出来るだろう

「仲間ならそれ、付けとけ」

「了解です・・・というかシオンさん?」

「ん?」

きゅ、と眉根を寄せながら困ったように笑うルークの顔を、

楽しそうに見ながら鈴の付いた赤いチョーカーを渡す

「僕・・・一応年上ですよね?」

「だから?」

「敬語を使って欲しいなぁ・・・なんて」

シオンはそれに笑った。しかも腹を抱えて盛大に

「あははははっ!気に入ったよ!」

「どうも」

一頻り笑った後、彼は後ろに控えていたミラーを見た

それだけで、次に何を言いたいか悟ったミラーは書類の束を渡す

「次はこいつだ」

「・・・・へぇ。“赤獅子”ねぇ」

書類を見て、クスリと笑う

そこに記してある名前は、“クラウ・クロム”

エーミレル私兵団出身の、男

戦場に出るだけで、誰もが恐怖し逃げ出すという

『エーミレル私兵団』

その名に、覚えがあった

確か、ルークもそこの関係者だ

「ルーク。君は彼の知り合いか?」

書類を見せ、名前を指さす

えぇ、まぁ・・・と、返事が返ってきた

「そうか。ミラー、次は彼と行け」

―役に立つだろうから

そう言われ、ルークもミラーも苦虫を数匹かみ潰したような顔になる

―叶わない

顔にはそう書いてある

「行け」

彼らは身を翻し、部屋から出て行った

一人になったシオンは、ふぅっと息を吐いた

「まだ、これだけ」

一年経って、まだこれだけ

まだ、人を集めることしか出来ていない

それでも、じっくり、ゆっくりやらなければ失敗する

“革命”は、失敗する

解っているからこそ、腹が立つ

「・・・・くそ」

少しでも早く、この国を変えたかった

何かが足りなくなれば、すぐに争いを起こすこの国を

笑いながら人を苦しめる貴族を

その全てを変えたかった

幸せになりたいのに、逆に不幸になる民を、もう見てられなかった

何より、黒猫だけが殺されるのはおかしいのだ

彼らに・・・“彼”に生きる権利がないのは

おかしいのだ

「元気に、してるかな・・・」

この一年、誰にも見せなかった弱々しい顔で、そっと外を見た・・・



見えなくても、心が繋がっていることを願って・・・
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