ネコ伝

□ぷろみす
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―何考えてんの?

そう言いたそうに、此方を見てくる

本当に、ライナは賢い

「しばらく牢に入っていてもらいたい」

「、・・・俺が邪魔になった?」

「違う」

即答だった

「違う。それはない」

―絶対に

そう言うと、ライナの顔に笑みが浮かんだ

それを見てホッとする

―拒まれるかと思っていたから

「ならさ、約束しろよ」

「、別に良いけど・・・」

ライナは立ち上がると、シオンに近づいて

自分の尾を彼の尾に絡めた

「絶対迎えにこい。約束」

尾と尾を絡めるのは、約束するときの決まり

するりと離れようとした尾を追いかけ、もう一度絡めたシオンは、

そのままライナを抱きしめ、唇を重ねた

「ん!?ぅ、んん!」

逃げようとするライナの身体を、押さえつける

抵抗しても無駄だと悟ったらしいライナは、次第に大人しくなった

「(そろそろか)」

チラ、と机の上の時計を見るとそろそろ5分になる頃だった

仕方なく唇を離す

「・・・・アホ」

「ん?」

顔を真っ赤にして、耳を伏せてしまっているのにちゃんと此方を見てくるものだか
ら、

離したくなくなってしまう

―本当は、離れたくないんだけど

「(仕方がない)」

そう、仕方がないのだ

この計画は、ライナを守る為に練ったものだから

「ぁ、ライナに良い物あげる」

ごそりとポケットに手を入れ、指先に触れた物を引っ張り出し、

それをライナの首につける

チリンと鳴ったそれを触り、ライナは不思議そうに尋ねた

「何、これ」

「・・・・首輪。所有の証」

「はぁ?」

お前アホか?と言いたいのだなの顔を見ただけで解った

「まぁ、色々役に立つと思うから」

―黙ってつけとけ

にっこり言っているのに怖い

何故か怖い

ライナはちょっとだけ及び腰になりながら頷いた

その頭を撫でてやるのと同時に、扉の外から声がかかった

『王子、そろそろ・・・』

王は何処かに行ってしまったのか、別の者が声をかけてきた

「じゃぁ・・・」

「あぁ」

ライナは扉を開き、外へと出る

その後ろ姿を見て・・・

―これで良かったんだ

そう己に言い聞かせる

「なぁ、良かったんだよな?」

「・・・今迷っても、もう遅いだろう?」

開けたままだった窓からレルクスが入ってくる

「まぁ、な」

「彼を守る為にはこうするしかない。解っているだろ?」

「あぁ」

「じゃあ、良いじゃないか」

尾に付いている鈴を鳴らしながら、彼は笑う

「ミラーが呼んでるよ」

「・・・・そうか」



 ◇  ◆  ◇



そしてシオンは闇へと堕ちていく

人をたくさん殺して

その上を進んで

どんどんどんどん、黒く染まっていく

ただ、守りたいと

幸せにしたいと思った者のために

それだけのために

己を犠牲にして

深く

深く深く深く

闇へ沈んでいく



そこに、光がないわけじゃないから・・・・











〜長い長い序章が終わる〜
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