ネコ伝

□ぷろみす
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そこに立っていたのは、年老いた国王

後ろには、この国最強と言われる魔獣騎士団が3名

「・・・どうかしましたか?」

王にそう尋ねたシオンの声は、少しだけ棘を含んでいた

「この部屋に黒猫がいると聞いてな」

「、誰からでしょうか」

王が右手を挙げた

それを合図に騎士団が部屋に入ってくる

王はシオンを馬鹿にしたような顔で、静かに言った

「お前の抱えている家臣からさ」

「では・・・もしも黒猫がいたらどうするのですか?」

シオンには、この後王が言うであろう言葉が予測できた

先程の「お前が抱えている家臣から」というのを聞いて・・・

気付かれないくらい小さく、嗤っていた

「・・・捕まえて、投獄する」

―ほら、やっぱり

彼は笑った

「何故、ですか?黒猫は殺すのではないのですか?」

この後、王が何を言うのか。そんなの、一つしかないではないか

これは、“シオンが作った計画”なのだから

ミラーと、シオンの計画

そこに新しく追加したものだから

“家臣”は、裏切ったわけではない。そう、命令したのだ

王は、シオンの為だけに茶番を演じているだけなのだ

「エリス家の長男からな・・・あやつは賢い」

「あぁ、そうですか」

王の不満そうな顔を見て苦笑した

レルクスのことだ、力で脅して言うことを聞かせたのだろう

きっと聞き入れてはもらえないだろうと思い彼に頼んだのだが

まさかそこまでやるとは思わなかった

―確認はこれくらいで良いだろう

今までの問いは、計画通りになっていたかの確認

あとは、王にライナを渡すだけ

「いますよ。ほら・・・って」

渡すだけ、の予定だったのだがこれは予定外

「(寝てる・・・?)」

室内にいる全員がそう思っただろう

たしか、王が扉を開いたのと同時に布団を掛け

確認の為に数分会話をしていただけの筈だ

「(え、ちょ・・・可愛いんだけど)」

なんて場違いのことを考えてしまい、シオンは頭を振る

「少しだけ、時間をくれませんか?彼と話がしたい」

「ならん」

「5分です」

これに許しを貰えなければ、後にある計画が全て狂う

だがシオンには、許しを得る自信があった

なぜなら

王は甘さを捨てきれない、優しすぎる王だから

「・・・・良いだろう」

―勝った

これで計画は進む。終わりへと。一直線に

「行くぞ」

魔獣騎士団は、それで下がる

扉が完全に閉められたのを確認して、振り返ろうとしたところで

「何考えてんの?」

「っ、驚いた。起きてたのか?」

寝台から声をかけられる

寝ていたはずのライナが、足をパタパタとさせながら此方を見ていた

「そっちの方が楽だろ?」

余計なことまで聞かれないし

ライナの言葉に、しまったと思った

王はきっと「どこから入ったのか」「狙いは何か」等沢山聞いてきただろう

それも、ライナに

その事を、シオンもミラーも全く考えていなかった

シオンと王の会話で終わる

それで済ませていたのだ

答えによっては、計画が狂ったかもしれないのだ

計画の事なんて何も言っていなかったのに、シオンに有利なように事が運ぶよう行動
した

シオンは溜息を吐き、苦笑した

「あぁ、助かった」

と、お礼を述べた途端少しだけライナの頬が赤くなった

お礼を言われる事に慣れていないというか、ただ単に照れたというか・・・

それを誤魔化すように咳払いをする

「それは良いとして、お前・・・・」
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