ネコ伝

□ぷりんせす・いん、めいず
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天気が良い

暖かく、気を抜くと眠ってしまいそうな日差し

そよそよと草が揺れる美しい庭にある、開けた場所

そこで、もの凄い砂埃が舞った

「ふむ」

団子を食べ終わり、フェリスは休憩を終えた

その視線の先には、風により砂埃のなくなった開けた場所が

その中心には、地に座っているレルクスとそのレルクスに木刀を突きつけ馬乗りに
なっているライナがいた

黒い尾をふわりと振ると、彼は立ち上がる

「勝っちゃった・・・」



時という者は早く流れる

ライナは10歳になった

5年経ったのだ

以前はフェリスにも負けていたのだが・・・・

自分の身体の特徴、力のバランス、早さ等を理解した途端、急に強くなり始め

フェリスに勝てるようになってしまった

本人曰く

『勝とうとするのがいけなかったんだ。

 まず自分の力を理解してからそこを補うように特訓。

  さらに相手に合わせた戦略を練れば勝てる』

それに気付くまで1年と3日かけてしまった

超人に囲まれていれば勝つのに必死となり、気付けなくもなるだろう



「私と同じレベルに立つとは・・・」

ライナはこの5年間で体術でもレルクスに勝てるようになっていた

剣術で勝ったのは今日が初めて

生まれてからずっと武術を学んできたレルクスとフェリスに、

武術を学び始めて5年のライナが勝つ

・・・はっきり言ってそれは異常だ

学問では、とうに2人を抜いてしまっている

と言っても、まだ彼には―シオンには追いつけないのだが

「あっと・・・時間」

「?なにかあるのかい?」

さっさと木刀を片付けに行ってしまうライナに、レルクスの言葉は聞こえていなかっ


「兄様」

「ん?」

ライナの方をじっと見て

手に持っていた串団子を食べる

「兄様は行かないのか?」

「どこへ?」

「あのアホの所へだ」

ぷくっと頬を膨らませるフェリスが何を言いたいのか解ったレルクスは

行かないよ、と答えた



 ◇  ◆  ◇



最近ライナは、シオンに呼ばれることが多い

一週間に3回は呼ばれている

「ほら、来たぞ」

いつも通り窓から侵入する

机に向かっていたシオンは、ペンを置くと立ち上がって笑顔を向ける

「いらっしゃい」

「何書いてたんだ?」

少年らしい、あどけない笑顔を浮かべるシオンの横をすり抜け、それを見る

そこには紙があり、数式が書いてあった

ライナは少しだけ首をかしげて考え始める

まだやっていない所のような気もするが、今やっている所で使う数式とそっくりだっ
たため、

それを応用して解き始める

しばらくそうして解いていって・・・

「ここ、間違ってる」

「え、嘘」

ほらここ、と指で場所を教える

その間違えているらしい場所を見ると

「ホントだ」

とシオンは笑った

その笑みを見て・・・

「お前、わざとやったろ?」

「あ、バレた?」

そんなシオンを見てライナは脱力した

「ったく・・・で?今日は何の用だよ」

「いや別に。用はないよ」

さらにライナは脱力した

何こいつマジでウザイ・・・とか思ったのだが

今日のシオンは“元”の彼であるという事を解っている

だから、何も言わないで好きにさせておく
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