ネコ伝

□でんじゃらす・ふぁみりー
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シオンの手にあった紅茶のカップが床に落ち、割れる

「は?」

「だから好きなのかと聞いている」

随分とストレートに聞いてくる5歳児だなぁ、と

シオンは混乱している頭の端っこで思った

「聞いたぞ。俺のもの発言したそうだな」

去年の話ね・・・

シオンの目が据わる。それはもう、呆れたかのような、そんな感じだ

「カップどうしよう・・・」

「話をそらすな」

「団子の追加貰っておいで」

「行ってくる」

フェリスの耳がピコッと立ち上がったかと思うと、凄い勢いで出て行った

窓から

それを見てから、シオンはカップの片付けに入る

「で?どうなんだい?」

「お前もか」

ガラスがシオンの指を切る

それに溜息を吐くが、そのまま続行した

「・・・好きかと聞かれれば好きと答えるさ」

「じゃあ、嫌いかい?」

「ちょっとウザいぞ?」

モソリとライナが動いた

もしかしたら聞かれていたかもしれない

が、別にどうでも良いとシオンは思った

問題は

「この傷・・・あいつが見たらなんて言うかな」

“元”の自分が、“自分”に気付いていないということだった



何かが割れる音がしたから眼を開ければ

『好きなのかと聞いている』

そのフェリスの問いが、誰に向けられたのかはすぐに解った

俺のもの発言がどうたら

カップの片付けがどうたら

そんな会話はどうでも良かった

ただ驚いていること。それは・・・

「(なんでこんなに動揺して?)」

自分がもの凄く動揺しているという事だった

幸い、布団をかけて、彼らとは反対を向いていたので彼らから顔は見えないのだが

顔がもの凄く紅いのだ

本人が顔の火照りに気付かないのはどうかと思うが

「(や!真面目に!うん、本当、マジで寝よう!)」

そう決めた瞬間だった

『好きかと聞かれれば好きと答えるさ』

心臓が、跳ねた

間を聞いていなかったのが失敗だった

いや違う

本当は聞いていなかったのだ

それが、シオンの声に

しかもピンポイントにその言葉に反応したのだ

はっきり「好き」と言ったわけではないし

ましてや恋人として「好き」と言ったわけでもない

そう、解っているのだが

「(なんか・・・なんか・・・)」

だんだん混乱を始めてしまって

それを頭から追い出すようにモソリと動く

「(フェリスの阿呆ぉ・・・)」



体術もそうだが、性格・思考にも悩まされるライナ

・・・とシオンであった



2人が恋に落ちるまであと・・・

「5年かなぁ」

「何が?」

レルクスの呟きに不思議そうに尋ねてくるシオンに、なんでもないと首を振って

彼は家へ帰ったのだった

・・・フェリスとライナをおいて











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