ネコ伝

□でんじゃらす・ふぁみりー
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金の可愛らしい耳が、動く

ピルピルと動いていたそれは、何か物音を聞いたようで音がした方へと向く

遅れてそちらを見る顔は、幼いながらも綺麗な顔だった

しかし蒼い瞳には感情というものが映っていない

少女―フェリスは読んでいた本を閉じ、立ち上がって窓を開ける

「貴様、何をしているのだ?」

黒い耳が動く。細くしなやかな尻尾が、彼女の声に応じるように動いた

「ってててて・・・見ての通り」

「見ての通り稽古の途中だよ」

木の幹に背中を打ち付け、地に座り込みながら咳き込んでいたライナは、

レルクスに引っ張られ立ち上がる



1年が経過した

家が燃やされ、両親が殺され

シオンと出会って・・・それから1年が経過したのだ

ライナは今、レルクスの家である“エリス家”に身を隠していた

エリス家はこの国一の貴族であり、王の牙という二つ名を持つ一族である

その二つ名の通り、王の牙として他の貴族の粛正

並びに王の護衛をするのだが・・・

現在、シオンの父である現王とレルクスとフェリスの父である現当主はケンカ中らし


・・・そのケンカの原因というのが、秘蔵のワインをどっちが飲んだかというもので

レルクスがライナを連れ帰った日に

『黒猫か?・・・あいつの嫌がる顔が見れるかも』

『じゃあ家で・・・・』

『飼って・・・じゃない、かくまって良いぞ』

という会話が交わされ

ライナはエリス家で生活することとなった

シオンからは

『もし見つかっても貴族には下手に手出し出来ないし・・・

  黙ってそこで生活してろ』

と言われてしまっている



そんな流れで稽古をつけられたり、勉強させられたり・・・・

かなりハードな生活をしていた

何がどうハードなのかと言うと・・・・

「死ぬ!死ぬからってぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

達人レベルのフェリスに2時間扱かれた後

超人レベルのレルクスに3時間扱かれ

最後に神と言っても良いレベルの2人の両親に4時間扱かれる

しかしその後も5時間みっちり勉強が待っているのだ

さらに疲れたライナには酷であろうフェリスが食べる団子の買い出しがあり

(行き帰り合わせて30分)

役14時間30分にも及ぶ稽古が終わる

朝5時起床で6時から20時30分まで稽古

その間に食事・休憩はなし

ちなみに、この家にくるまで戦闘経験以前に、こうして稽古をしたことすらなかった
ライナは、

一日目に早くも気絶

たま〜〜〜〜〜〜〜にシオンの元へ遊びに行く事もあるのだが

それが貴重な休みになっていた

「痛い・・・かなり痛い・・・」

とか言いながらも、実はこの1年間で血を流したことは一度もない

フェリスは手加減して剣の腹で攻撃してくれるが

レルクスと彼らの両親は問答無用に刃で攻撃をしてくる

避けるのは良いが、その力で生み出される風に吹き飛ばされてしまうのだ

「(どんだけ力が強いんだよ)」

「休んでる暇ないよ?ほら」

「いいぃぃぃ!?」

忘れていたが

ライナの睡眠時間は4時間である

理由は・・・居候の身のため、色々家事などの雑務をやらされるからだ

「う、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

今日もライナの元気な悲鳴が上がる・・・・



「1年、よく生きてたな」

「いや、もう半分死んでるかも」

「あはは。確かに」

あの後、レルクスの両親が王に呼ばれたため稽古は中止

ということで、皆でシオンのもとへ遊びに来た

「フェリスは随分大きくなったな」

「うむ」

「ってシオン。それ年寄り臭いぞ?」

「え?シオンはまだ若かったのかい?」

「お前等・・・」

彼らが遊びに来ているとき

もう一人の“シオン”が相手をすることが多くなった

いや、“元”のシオンが出てくることがなくなった

“シオン”曰く、“元”のシオンは他人との接触を嫌うようになったらしい

『俺にとっては嬉しいことだけど』

そう言った“シオン”は言葉とは裏腹に寂しそうだった

「あんま酷い事言うと・・・ライナ、今夜は寝かせないぞ?」

「ぇえ!?って変な言い方すんな!」

「兄様・・・あれが禁断の恋というものか?」

「そうだよフェリス」

「ちげぇよ!」

ライナが一通りツッコミ終えると、それを待っていたかのようにシオンがベッドを指
さす

エリス家の稽古は激しいというか、厳しいため、こうして遊びに来たときはベッドを
貸してやっているのだ

「おやすみ〜」

そのせいかライナは、シオンに逆らえなくなり始めた

というか、ベッドと枕を人質に取られてしまい、逆らえなくなった

「まさかライナの弱点がベッドと枕になるとは・・・」

「虐めすぎたね、フェリス」

「うむ。そうだな兄様」

「・・・もう少し早く気付いてやれよ」

フェリスは16本目の団子に手を伸ばしながら微かに笑った

かと思うと。今度は呻り始めた

「どうしたんだい?」

「兄様、私は気になっていることがある」

一番上の団子を食べ、ごくんと飲み込み、茶をすする

フェリスは肝心な話になると、こうして焦らすのだ

「シオンはライナが好きなのか?」

 パリン
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