ネコ伝

□えんかうんと
1ページ/2ページ

フェルナへ

 この国では、黒猫は殺されてしまいます

 だから、この国を出てください

 通行許可証を入れておきました

 それを使ってください

 でも、黒猫というのが解っては通してくれません

 地図も入れておいたから、記された場所へ行ってください

 きっと役に立つと思います

 

 フェルナ、一人にしてゴメンね

 でもきっと、フェルナを幸せにしてくれる人は現れるから

 それまで、生きてください

 逃げて逃げて、逃げ延びて

 強く生きてください

           父より



いつの間にかズボンのポケットに入れられていた手紙を読んで、フェルナは泣いてい


父や母が、どれだけ苦労して生きてきたのか

どんな思いだったか

その手紙一枚で解ったから

フェルナは、とある森の中に隠れていた

木の上に登り、そこに座って身体を休めていた彼は、その手紙に気付いた

「ん?」

手紙をしまおうとして、まだ続きがあることに気付く



追伸

 君はこれから“ライナ”と名乗ること

 (“フェルナ”で戸籍登録してあるからね)

 信用できる人にしかフェルナと名乗ってはいけないよ

 じゃ・・・・

 頑張ってね☆



「・・・・・・って父さああぁぁぁぁぁぁぁん!?」

本文と追伸での父の口調が違うのと

最後の☆に、思わずツッコんでしまった

涙なんて吹き飛んでしまう

そこで、気付いてしまった

「父さんの、馬鹿・・・」

きっと、一人になったら泣いてしまうだろう、と予想していた父の考えに笑ってしま


笑いながら、涙が溢れてきて・・・

泣いてしまう

「(僕は・・・ライナ)」

涙を止めるように、言い聞かせるようにその名を繰り返す

「(僕は・・・いや、俺はライナだ)」

その時だった

「(、人の声っ)」

フェルナ・・・いや、ライナはすぐに反応し、さらに高いところへ登る

そこで息を潜め、身を固くする

足音と、人の声はだんだんと近づいてきて

ライナの隠れている木の下で止まる

「王子、ここらでどうですか?」

「別にどこでもいい」

大人の声と、少年の声

「昨夜燃やされた家が見たいというから・・・」

そう話す男のよそよそしさに、フェルナは一瞬殺意が芽生えた

少年はというと、男の声など聞こえていないかのように声を発さない
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ