ネコ伝
□えんかうんと
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フェルナへ
この国では、黒猫は殺されてしまいます
だから、この国を出てください
通行許可証を入れておきました
それを使ってください
でも、黒猫というのが解っては通してくれません
地図も入れておいたから、記された場所へ行ってください
きっと役に立つと思います
フェルナ、一人にしてゴメンね
でもきっと、フェルナを幸せにしてくれる人は現れるから
それまで、生きてください
逃げて逃げて、逃げ延びて
強く生きてください
父より
いつの間にかズボンのポケットに入れられていた手紙を読んで、フェルナは泣いてい
た
父や母が、どれだけ苦労して生きてきたのか
どんな思いだったか
その手紙一枚で解ったから
フェルナは、とある森の中に隠れていた
木の上に登り、そこに座って身体を休めていた彼は、その手紙に気付いた
「ん?」
手紙をしまおうとして、まだ続きがあることに気付く
追伸
君はこれから“ライナ”と名乗ること
(“フェルナ”で戸籍登録してあるからね)
信用できる人にしかフェルナと名乗ってはいけないよ
じゃ・・・・
頑張ってね☆
「・・・・・・って父さああぁぁぁぁぁぁぁん!?」
本文と追伸での父の口調が違うのと
最後の☆に、思わずツッコんでしまった
涙なんて吹き飛んでしまう
そこで、気付いてしまった
「父さんの、馬鹿・・・」
きっと、一人になったら泣いてしまうだろう、と予想していた父の考えに笑ってしま
う
笑いながら、涙が溢れてきて・・・
泣いてしまう
「(僕は・・・ライナ)」
涙を止めるように、言い聞かせるようにその名を繰り返す
「(僕は・・・いや、俺はライナだ)」
その時だった
「(、人の声っ)」
フェルナ・・・いや、ライナはすぐに反応し、さらに高いところへ登る
そこで息を潜め、身を固くする
足音と、人の声はだんだんと近づいてきて
ライナの隠れている木の下で止まる
「王子、ここらでどうですか?」
「別にどこでもいい」
大人の声と、少年の声
「昨夜燃やされた家が見たいというから・・・」
そう話す男のよそよそしさに、フェルナは一瞬殺意が芽生えた
少年はというと、男の声など聞こえていないかのように声を発さない