ネコ伝

□どきどき
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其処では殺し合うのが常識

弱い者は殺され、生きることを放棄した者は死ぬ

まさに弱肉強食の世界を表したかのような世界



ここ、307号特殊施設はそんな場所だった



戦場に出すための強い子どもを育成するために作られた孤児院



たくさんの子ども達の中で、どの要望にも完璧に応える者がいた

殺せと言われれば殺す

普通では出来やしない事を要求しても成し遂げる子ども



自らの感情を、完璧に殺せる黒猫―ライナ

彼は、先日出会ったばかりの少女を守る為に人を殺めた



◇  ◆  ◇



時は一ヶ月前まで遡る

ジェルメの元で訓練を受け、試験に合格した3人の子ども達がいた

そのうち二人は、別の施設に移動する際暗殺され死亡

・・・と、表向きはそうなっている

実際はジェルメの仲間―つまりシオンの部下が手引きして国外へ逃亡

残った一人は王直々の命令があったため、逃がすことはできなかった

それがライナである

王直々、とは言っても王が独断で決めたことではない

レルクスが王に進言をしたから決定したことだ

更に言うと、そのレルクスの進言はシオンが命令を下したから行われたことだ

そうとも知らない王は、ジェルメに命令を下した

ジェルメはその命令に従った

それが一番良い方法だと思ったから

ジェルメはライナと別れる際、一つの約束を交わした



『絶対に人を殺してはいけない。良いわね』



もし殺してしまったら、シオンの立場が危ういと説明された

シオンが隠していた黒猫

それが、国立機関の人間を殺したとなると王への反逆になる

黒猫は殺す、という王の決定を無視し続けていたシオンは

きっとこれを理由に殺されるだろう

“王子が隠し続けた猫のせいで、幹部が一人死んだ。

 全ては黒猫を隠していた王子のせいだ”

たとえ殺された者が幹部でなかったとしても

この国では、黒猫は絶対の悪という認識だ



シオンを危険に晒したくないライナは、この約束に頷いた



そして307号特殊施設へと移動したライナは、そこで一人の少女と出会ったのだ



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