工房

□冬の恒例
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今年もこの季節がやってきた

それは冬

勝手場に立つ者としては、一番嫌な季節だ

理由は、水

手の感覚がなくなってしまうのだ

稽古の時も辛い

冷えた手は少しの痛みも、かなりの痛みに感じる



けれど、ここに困らない者が二人―・・・

「総司。水仕事を何故やらない」

「だぁって、面倒じゃない?それ」

「・・・総司」

本日の朝餉当番の沖田と斎藤

現在、沖田は斎藤にお説教を受けていた

「確かに、敵に攻め入られた時に困るかもしれないが・・・」

「あー、はいはい。でもやらないよ」

トントントン、とリズムを立てて野菜を切る沖田

もう、溜め息しか出なかった

水仕事を終え、水気を取り次の仕事にかかろうとする

「一君」

「ん?どうした」

沖田が包丁を置いて、斎藤の手を握った

「僕が水仕事を嫌う理由はね?君の手をこうして温められないから」

「別に俺の手などどうでも良いだろう」

「良くないの。僕が」

赤くなった手は、見ていて痛々しいようだ

斎藤は、刀さえ握れれば良いと思っているのでそこまで気にしないのだが

「一君が好きだから大事にしたい。これじゃあ駄目?」

そこまで言われれば

斎藤は勿論―・・・

「駄目じゃ、ない・・・」

そう答える

「だから僕は、多分これからも水仕事はしないよ」

「・・・少しは、してくれ」

そう困ったように言う斎藤に笑みを返して

二人は支度に戻ったのだった



「(お二人って・・・そんな関係だったんですか)」

それを見てしまった千鶴でした―・・・

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