工房

□いつでも側に
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燐は、空を見て顔を顰めた

空は灰色がかった水色

冬の空特有の色だ

燐は、真っ青な空が好きだ

どこまでも、どこまでも青い空が

雲一つない空は、もっと好き

「早く夏にならねぇかな・・・」

なったらなったで、暑さで死にそうになるのだが

「んぉ?」

ふと呼ばれた気がして、振り向く

と同時に、ぎゅう、と抱きしめられた

「兄さん、見つけた」

「雪男、・・・いいから離せぇ!ここ何処だと思ってんだ!?」

「ん?学校」

「馬鹿だろ!?」

「うん。兄さんの事に関しては」

雪男が浮かべた笑みに、毒気を抜かれる

というか、呆れる

怒っても、いつもこうなのだ

これじゃあどっちが兄か、解らない

「兄さん、空見てたの?」

「ん?あぁ。青くねぇなって」

兄さん青い空好きだもんね、と笑ったかと思うと

急に真面目な顔になる

「僕も、青い空は好きだ。冬は、見れないからちょっと残念」

けれど、と付け足す

「兄さんの目は、空の色だから。僕はそれを見れるだけで満足」

言って、またニコリと笑った

今度は、何も言えなくなる

呆れたからじゃなくて

照れたから

何か言わなきゃ、と下へ行っていた目線を上へとあげる

そうすると、雪男と目が合って

「お前の目も、空の色だな」

なんて、するりと言葉が出て来た

雪男はしばらく呆然としていたけれど

次には、嬉しそうに笑って「兄さん!」と抱きしめてきた

「おいコラ!離せって!雪男!」

それを勿論聞くはずもないので

最終的には諦めた燐でした

「(夏がくるまでお前の目見て満足してやるよ)」

言葉には出さないけれど、それを付け足して・・・

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