工房

□お仕事のお時間です
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あぁ、またか・・・

廊下にいた者全てがそう思っていた

その視線の先には、金髪の青年―コナツが

右手には釘バット

左手には書類

なんという組み合わせだろうか

「少佐〜・・・どこですか〜ぁ・・・」

「あ、あの・・・少佐なら・・・」

声をかけた者は、「さらば友よ!」とでも思っただろう

バットを思いっきり喉元に突きつけられた

ヒュン、という風を切る音までした

プロの野球選手も適わないだろう

「あぁ?・・・て、わぁ!すいませんっ!」

「・・・じ、自室に入って行くのを・・・見ま、した」

もの凄い嬉しそうな顔をしたコナツは

丁寧にお辞儀をしたかと思うと、走り出した

「し、しんだかと思った・・・」

場所を教えてくれた彼は、その場に座りこんだのだった





「まったく!あの人はいつもいつも!!」

コナツは、探している人間・・・ヒュウガの自室へと向かっていた

この間は「林檎飴買ってくるー」と言って帰ってこなかったし

その前は「仮眠とりたいー」と言って帰ってこなかった

さらにその前は「書類届けてくるー」と言って・・・

「あー!思い出すだけで腹立つっ!」

そんな調子でいつも逃げられているのだ

以前は、今手に持っている釘バットで殴っていた

が、そうすると全然仕事をしなくなり殴るのをやめた

だが、もう限界なのだ

怒りが・・・限界を超えてしまったのだ

目的地に辿り着き、バットを握り直す

そして

「少佐ああぁぁぁ!軽く死んでください!」

と、勢いよく扉を開け放った

瞬間

「あ、おはようコナツ」

「・・・・」

まるで来るのを感じ取っていたかのようにヒュウガはそこにいて

上から思いっきり振り下ろしたバットを、刀の鞘で受け止めていた

「バレてましたか」

そのままの体勢で、静かに会話する

「そりゃ殺気を出していればね・・・起きるよ。誰でも」

「・・・・ちっ」

「え!?今、ちって言った!?舌打ちしたよねコナツぅ!?」

仕方なく、バットを下ろし溜息を吐く

代わりに書類を出して

黒いオーラ全開で

「仕事してください少佐☆」

ザッと一瞬にして青くなったヒュウガは腹を押さえる

「・・・・ちょっとお腹が痛くなって・・・」

しかし強くなったコナツ

このくらいでは負けない

「はい、書類です」

「いや、だから・・・」

「とりあえずサインをお願いしますね」

「ちょ・・・聞いてよ〜」

「はい、ではバット行きまーす」

「うえええぇぇぇぇぇぇ!?」



 しばらくお待ちください☆



「危うく脳天かち割れる所だった・・・」

ぜーぜーと肩で息をするヒュウガとコナツ

一体何があったのだろうか

「まったく・・・何をしたら仕事をしてくれるんですか」

「え、何かしてくれるの」

「じゃないと仕事しないでしょう?」

流石、仕事人コナツ

きっと書類作業で彼の右に出る者はいない

「じゃ、久々にヤらせて☆」

「・・・は?」

「だーかーらー」

「いやいや、そうでなく」

バットを握りながら、今聞いたことを頭の中で繰り返す

大分落ちついてきた所で一言

「馬鹿ですか?」

「う〜ん・・・」

そう唸りながらコナツを横抱きにするヒュウガ

そのままベッドへと下ろす

「コナツの前だけだよ」

「貴方はいつもでしょう・・・」



なんだかんだ言いながら

ヒュウガの好きにさせる事にしたコナツでした
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