工房

□ミカゲ
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最期に見たのは泣き顔だった

泣くなよ

泣かせるために会いに来たんじゃない

笑ってくれ


テイト………






笑顔を知らなかったお前の始めて笑った顔を思い出す

馬鹿みたいにでかい獣に追い掛けられて、逃げた先で鳥の巣を壊してしまった

殺してしまったかと思ったひなが、あくびをして目を覚ました瞬間、弾けるように二人笑った

あのテイトが笑ったんだ


あいつを笑わせてやれるのは俺だけなのに……





かみさま

神様!

ここは教会だろ?

神様に一番近い場所のはずだろう?

お願いだ

お願いです

あいつを一人になんて、できないんです

強がって、意地っ張りで、素直じゃないから………

俺が……俺………

誰か………
















―ようやく見つけた

これであいつは泣き止む

ん?目ぇ覚めちまったか?

すまねぇ、ちょっとガマンしてくれ




ダレ?





狭い所に押し込められ、ようやく逃げた先に

何だかやたらと引かれる匂い………


「ぶるひゃ〜」

それに向かって一声鳴いた

「これ…まさか………」

初めてかぐ匂いのはずなのに……

なのに懐かしい……

思わずその頬をペロリと舐めた

翡翠色の瞳から水がポタポタと………
次第にボロボロと大雨みたいになって、こぼれるのが気になって

ペロリと舐めあげた


ナカナイデ

ナクってなんだっけ?

この水を止められたらいいのに……




ペロペロとこぼれる雫を舐めていると
ぎゅと抱き締められた

苦しいけど心地よい


ナカナイデ ナカナイデ

「ぶるひゃ〜」

もう一度鳴けば翡翠色の瞳のニンゲンがふわりと笑った





あぁ、よかった

コンニチハ こんにちは

テイト

また会えたね


今度はずっと一緒だ









☆END☆
 

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