妖の砂糖

□風邪
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「くっしゅん!」

夏目は今朝から熱があり、部屋で寝ている

「全く、これだから人間は……」

斑は悪態を付きながらも、進んで湯タンポになっている
なんだかんだ言っても心配なのだ


夏目が風邪だと、どこからともなく聞いて
駆け付けてきたヒノエ達を追い払うと部屋は…
否、家はシンと静まりかえっていた

「静かだなぁ」

「そんなことは、どうでもいい!
お前はさっさと元気にならんか!阿呆め」

勢い良く、しかし小声で訴えてくる斑に夏目は苦笑して目を閉じた



―暗イヨ
―怖イヨ
―寂シイヨ
―ダレカ助ケテ

暗闇の中、そんな声が響いていた

夏目は目を閉じ、耳を塞ぎ、蹲っていた

―助ケテ、助ケテ、助ケテ

煩い!黙れ、黙れ、黙れ!

夏目が必死で寂しさに、苦しさに、怖さに耐えていると声が聞こえた

つめ……な……なつ……夏目!

ハッと目を開くと人形の斑が不安そうに自分を覗き込んでいた

「大丈夫か!?夏目!」

「あ、あぁ大丈夫」

そう言うと安堵する斑に申し訳ない気持ち半分、嬉しく思った

「なぁ、先生
一緒に寝てくれないか?」

もう、怖い夢を見なくてすむように
一緒に寝てくれ、先生

「まったく、仕方のないやつだ」

そうは言っても布団に入って、一緒に寝てくれる先生は優しい

「ありがとう、先生。おやすみ」

「あぁ、おやすみ。夏目」

そこで俺の意識は闇に呑まれた


その後は、夢を見ることもなく、ぐっすりと眠れた



たまには風邪も良いかも?
と密かに思ったのは内緒だ
 

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