妖の砂糖

□二人で微睡む時間
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久々の休日

いや、休日は毎週あるのだが

塔子に付き合って買い物に行ったり

妖達に名前返したり

友人と遊びに出たり

名取の仕事を手伝ったり

まぁ、色々と充実し過ぎた日々を送っていた為

休日らしい休日なんてなかった

「む〜・・・」

「にょ〜・・・」

珍しく布団を敷いたままで

その上にごろごろ

勿論私服には着替えているのだが

そこから動く気配がない

塔子達も出かけたし

妖達もくる気配がないし

必然的にこうなる

珍妙な猫・・・

もとい用心棒の妖、斑の仮の姿である猫を撫でながら

「なぁ、先生・・・何処か行くか?」

なんて尋ねてみる

「たまにはこんな日も良いじゃないか」

喉元を撫でてやれば、ゴロゴロと気持ちよさそうな音を出す

あのとき、斑の封印を解いてから一人でいる事がなくなった

それを思い出して、夏目は笑った

今までが孤独過ぎたのだ

嘘を言っているわけではないのに

“嘘つき”と言われ、嫌われた

“変な子”と気味悪がられた

そのせいで、自分を嫌うようになってしまった夏目

そのせいで、一歩身を引くようになった夏目

誰も彼を理解しない。しようとしない

気付けば彼は一人だった

最初は悲しかった気もするが

慣れてしまった

本音を言えば、やはり寂しいし悲しい

だが今は違う

「ん?」

かならず、この妖が

斑がいるのだから

周りを見れば、友人や仲間がいる

何にせよ、そういった者と出会えたのは先生のおかげであり

友人帳のおかげであると思っている

「夏目」

「なんだよ」

その姿が煙に包まれたかと思うと

「うわ!?」

手を引っ張られ立たされる

煙が晴れたらそこにいるのは

やはりというか、いやもう予想通りの人

「先生・・・なんでその姿?」

斑が人型になった姿

しかしそれは女子高生姿ではない

白銀の、腰のあたりまであるくせのある髪に

鋭い翡翠の瞳の、着流しの着物を着た男

最近はよく見るようになった格好だった

見るとき、と言えば・・・の時だろうか

思い出して顔を赤くする

「なんだ?何赤くなっている」

「う、うるさい!馬鹿にゃんこ!」

握られている手を振り解こうとすると

引っ張られてしまい、胸に飛び込むような形になる

そのままひょい、と横抱きにされてしまう

斑はそのまま布団の上に座り、夏目を膝に乗せた
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