妖の砂糖

□続・貴方の優しさにごめんなさい
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一緒にいてくれるって言っていたのに

ねぇ、独りにしないで

俺を置いていかないで

もう、独りは嫌なんだ

お願い、こっちを向いて

俺の名前を呼んで!



 〜・○・●・○・〜



「今日も・・・」

最近、先生は夜になると何処かへ行ってしまう

肌寒くて眼を覚ましたらいなかったのだ

それが、2週間前

朝になると先生は帰ってきているけれど

その体からは、俺の知らない妖の匂いがして・・・

「・・・て、俺何考えてるんだ」

これじゃあ、人間で言うところの

“浮気を心配する妻”とやらじゃないか

俺は、田沼の事を忘れられないし

忘れたくない

だから、俺はあいつを裏切るようなマネはしたくない

したくない、のに・・・

「先生の・・・馬鹿・・・」

なんなんだ

この、気持ちは・・・



「む、起きたか夏目」

「・・・おはよ」

朝起きると、先生は帰っていた

ホントは、今帰ったのか、とか

昨夜は何処行っていたのか、とか

聞きたい事はあったけど

とりあえず

「なんで俺は先生の膝の上にいるんだ」

別に斑の姿で良いのに

わざわざ人の姿で、しかも膝に座らせられて

寂しいな、とか思っている時は嬉しいけど

今はそこまで寂しくないから

逆に嬉しくない

「いや、なんとなくな」

一つ溜息を吐いて離れようとすれば

「ん、」

痛いくらい抱きしめられて、立てない

「・・・先生?」

「なんとなくだ。気にするな」



もう一つ、気になっていた事があった

「先生」

こう呼んだとき、先生から離れて行くのだ

返事をしてくれても、曖昧な返事しか返してくれなかったり

もしかして、俺は迷惑なのか?

先生は基本自由な妖だ

他の妖より妖らしい、自由を愛する妖

先生は、俺から離れようとしているのか?

だとしたら

離れなければいけないのは、迷惑をかけている俺の方だ



 〜・○・●・○・〜



その日は、夢を見た

温かい夢だった

あの人間が・・・田沼が、側にいてくれて

俺に笑いかけてくれて

俺に、触れてくれて・・・

なのに、俺はそれに喜べない

嬉しい筈なのに・・・どこか、寂しくて

それで思い出すんだ

先生がいないからだって

温かくて、大きな先生

俺が望めば、わざわざ人型になってくれる先生

ねぇ先生

先生は俺が嫌いになったのか?



「また、いないのか・・・」

眼を覚ますと、やはり先生はいなかった

こんな夢を見たのは、先生のせいだと思う

先生が、側にいてくれないせいだ

先生・・・先生!

先生は何処にいるんだよ

俺の側にいてくれるって言ってたのに

お願い

お願い!

「独りに・・・しないで・・・っ!」

涙が、溢れた

「やぁ、どうも今晩は」

「・・・っ!」

やってしまった

こういう時、自分の妖気を呪う



 〜・○・●・○・〜
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