妖の砂糖

□貴方の優しさにごめんなさい
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※ 夏目は猫系の高位の妖怪設定

  オリジナルです





「田沼?なぁ、目を開けてくれ」

人間は脆い

それは、心の面でも、体の面でも

あの人に言われていたのに

―別れが辛いから止めとけ

そう、言われていたのに

俺は、人間を好きになってしまった

黒髪の・・・人間を

「田沼・・・俺を、独りにしないでっ」

人間は、脆い・・・



『夏目・・・夏目』

「・・・せん、せぇ?」

『言っただろう。やめておけと』

「でも、俺は・・・」

『来い。お前が寂しくないよう、一緒にいてやる』



 〜・○・●・○・〜



あれからどれだけ経ったのだろう

いや、もう何十年と経っているのかもしれない

俺ら妖には、時というものはあまり関係のないものだ

ただ、寂しいか、寂しくないか、という事だけ

自分の尾が揺れるのを見ながら、思いついた事を口に出す

「なぁ先生」

「うん?」

「今日は川に行きたい」

俺を膝に乗せて、自分は木に背を預け微睡むこの妖は―斑

俺と同じ高位の妖で、今は人の姿をとっている

白銀の、くせのある髪に・・・

同色の、ピンと頭の上に立つ耳に、柔らかく長い尻尾

今は閉じられているけれど、鋭い金の瞳

これが先生の人の姿

俺に「斑」と呼ばれたくないようで、「先生」と呼べと言われた

あの日から、先生はずっと一緒にいてくれる

あの人間を、失ったあの日から・・・

向かい合わせの体勢だから、先生の胸元に擦り寄れる

先生の着物を掴んで、擦り寄った

―寂しさを、紛らわしたくて

先生が、俺の耳を撫でた

俺の耳は、先生のように獣の耳で

やはり、頭についている

「夏目、今日はやめにしよう」

「・・・ぇ?」

「川に行くのをやめよう、と言っている」

顔を上げると、金の瞳がこっちを見ていた

「今のお前を連れて行こうとは思わない」

「・・・ごめん」

先生が言いたい事も解る

俺は、昔から色んな妖に狙われやすかった

こういう心境の時には、よく襲われそうになっていた

先生が言うには、俺の妖気は美味しそうなものらしい

まぁ、先生がいるんだ

そう簡単に食われないだろうけど

「先生・・・今日は、どうしても川に行きたい」

「・・・なら」

唇を重ねられる

そういえば、あの人間ともこんな関係を持っていた気がする

いや、持っていた

先生は、寂しさを紛らわすのには、これが一番だと言ってた

確かに、そうだと思う

この行為は、自分をただひたすらに求められている感じがして

とても、気持ちが良い

「ん、ふぁ・・・はぁっ」

だんだんに脱がされていく着物

露わになった肌に、先生は唇を落とす

ピリっとした痛みが走り、そこに紅い花が咲いていく

そのまま唇は下へと下りて

胸の飾りに、舌を這わす

食まれて、吸われる度に甘い痺れが走る

「ぁ、やぁっ・・・」

ひやりとした先生の手が、体を這って

反対側の飾りを、弄る

「やだっ・・・せんせ、そこばっか、やぁっ」

驚いたように顔を上げた先生と、目が合う

「珍しいな・・・お前がそんな事を言うのは」

言われて、顔が火照った

何故、こんな恥ずかしい事を言ったのだろうか

「恥ずかしがるな。たまには良いだろう」

「ひ、ゃあ!」

尾の先を噛まれ、驚いた

そこは、一番苦手な場所なのに

今度は、尻尾と耳を弄り始めた

「や、やだぁっ!・・・ふぁ、あ、んやぁ!」

どんどん力が抜けていくような感じがする

別に、自分で触ったり他の妖に触られる分には感じないのに

先生に触られると、駄目なのだ

躯が素直に反応して

喜んで

こんなこと、あの人間との時もなかった
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