仕事の砂糖

□ご・いらっしゃいませ
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好きな人はいるのか

それは、「私は貴方が好きです」って

言う前触れのようなものだって俺は思う

実際体験して、そう思った

まさか、それを俺―佐藤潤が言うとは思わなかったが





「で、どうなんだよ」

つい先程佐藤さんの家に着いて

とりあえずコーヒーを頂いて

それを飲んだ所までは良かったのです

“お前、好きな奴はいるのか?”

その問いをされた相馬さんは、思いきりむせました

落ち着いたのを見計らって、佐藤さんはもう一度問いかけてきて

今度はコーヒーを零しそうなので

相馬さんは、カップをテーブルに置くことにしました

「・・・正直に?」

「それ以外何があるんだ」

「だよね〜」

困ったように笑いながら、相馬さんは考えました

もし、「好きな人は佐藤君だ」と言って嫌われたらどうしようと

嫌われるのは、嫌です

だったら、先に佐藤さんの好きな人を聞いてからにしようと思いました

彼の弱みを握れば、彼は秘密を守ろうと側にいてくれる筈です

嫌われて、一緒にいれないよりは遙かにマシだと思いました

「先に・・・佐藤君の好きな人教えてよ」

「断る」

「・・・え〜」

即答され、さらに困ってしまいます

好きなのは、きっと隠してはいけないと思うのです

なら・・・と

相馬さんは、覚悟を決めました

「佐藤君の事、好きだったかもしれない」

「・・・過去形なのか」

「どうだろうね」

いつもの、本心を見せない笑顔を顔に貼り付け

曖昧な返事をしてしまえば良い

そう、考えたのです

「・・・俺はさ」

ふいに、視界が反転して

視界いっぱいに、佐藤さんの顔が映りました
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