あやかし恋物語

□プロローグ
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子の刻

1人の女が山道が駆け上がっていた。
髪を振り乱し、ただ一心、自らの願いのために。

「はぁ、はぁ」

女が辿り着いたのは古びた祠だった。

「この地に宿りし土地神様。
 どうか私の声に耳を傾けてくださいまし!
 私はお武家様に娶られました
 しかし、子を宿すことができませんでした
 私が子を宿さなければ、一家郎党……
 どうか、私共の腕に子を抱かせてくださいまし!
 その為ならば、いかなる事も甘んじて受け入れますから!
 どうか、どうかお願いいたしまする」

女は泣き泣き手を合わせ願った

『良いだろう』

「えっ!?」

どこからか聞こえた声を不思議に思い、女は辺りを見回した

しかし、声の主の姿は見えない

『貴様が我に頼んだのだろう?』

女はハッとした
声の主はこの地の土地神様だと気がついたから

『貴様に子を宿らせてやろう。
 ただし、条件がある。
 一番先に生まれた子が14歳になったとき
 我が生け贄として迎える』

「わかりました」

女はすぐに山を下りて行った



それから女は3人の子を産んだ
女はあの夜のことを“夢”と思い込んだ

そして、月日が流れて行き“あの日”のことは
女の記憶から消え去って行くのだった
 

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