貴方の優しさにごめんなさい

□モノクロな世界の中
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独リガ嫌イナ妖ニ

白クテ綺麗ナ妖ハ言イマシタ

―私の元へ来い

ソノ言葉ノ響キハ

コレ以上ナイ程甘クテ・・・

独リガ嫌イナ妖ハ

白クテ綺麗ナ妖ノ手ヲ取リマシタ

         ―森の主の記憶から



 ○  ●  ○



誰かが俺を呼ぶ

優しくて、暖かくて

なのに何故か悲しい声

泣かないで

お願い泣かないで

俺は大丈夫

大丈夫だから



 ○  ●  ○



彼はそっと瞼を持ち上げる

最初に目に映ったのは、白銀だった

次に目に映ったのは、金のような

翡翠のような不思議な色

だんだん意識がはっきりしてくると、それが妖だと解る

「なつめ・・・」

ほっとしたように息を吐く妖

綺麗な長い、白銀の髪

金のような翡翠の瞳を細めて

あぁ、綺麗だな・・・

彼はそう思った

「私が解るか?」

その言葉に、ふと我に返る

そういえば、この人は誰だろう

よく見れば、この妖は所々傷がある

自分の手を見れば、やはり傷が

「・・・あの、ありがとう」

「良かった・・・」

ぎゅうっと抱きしめられ、彼は驚く

どうしてこんな事をされるか解らない

「貴方は誰ですか?俺を知っているの?」

瞬間、彼を抱きしめていた腕は力を失う

そっと顔を見れば

その瞳には、哀しみが浮かんでいた

それを見て、どうしてか胸が苦しくなった

初対面の筈なのに

「なつめ・・・て、俺の名前?」

白くて綺麗な妖は、何も言わずまた強く抱きしめた



どうして忘れてしまったのだろう

とてもとても大切な事なのに

それとも

君にとっては、大事じゃなかったのかな



「行く場所がないだろう。私の元に来い」

耳元で囁かれた言葉

それに、うん、と頷く

これ以上彼を泣かせてはいけない気がして

ううん違う

側にいたいと思った

弱く

けれどもしっかり彼を抱きしめた



 ○  ●  ○



貴方が幸せなら、それで良いの

だからお願い

私の事はいい

貴方が幸せだった頃の記憶を戻して・・・
 

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