あやかし恋物語
□9章
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「貴志はこの森の主だった」
斑が語るのは貴志の前世
辛く、悲しい一生の物語
「そして、一度記憶を失ったんだ」
あの時の絶望は今でも思い出せる
「詳しくは、またいつか語ってやる」
今は必要な事だけを、そう言って斑は要と透を見据えた
「貴様等は人間だ“前”も“今”も
しかし、貴志は違う。“今”は人間だが、
“前”は妖…この森の主だった」
人間にも話が分かる様に、必要ないことは悟らせない様に要約し話した
「理由は分からないが、今の貴志は妖の時の記憶が強く、人間の時の記憶が無い
更に、性格は今とも前とも違う
簡単に言うと純粋無垢だ、己の意思を持っていないに近いがな」
「そんな、兄さん!!」
「要兄さん……どうにかならないの?ネコちゃん」
透は薄々気付いていた
要が貴志に只ならぬ感情を抱いていることを
しかし、それが“愛”なのか、それ以外なのか分からないでいた